【うたた寝*吉三(きつなり)】




うつらうつらと船を漕いでいると、もぞもぞと布団の中に潜り込んで来るものがあった。

それは冷たい手足を我の身体に擦り寄せて、少しでも熱を得ようとしているようである。

ふわりと柔らかいものが頬をくすぐった。

瞼は眠気という糸に固く縫い綴じられて、頑として開こうとはしなかったが、
ゆるりと右手を上げて、サラサラと手触りの良い頭を探り当てる。

やれ、一撫でしてやろ、と思いながら、意識はふわと眠りに誘われた。

ふわりふわりと、温かな真綿に包まれるよう。



………!?

不意に、肩に鋭い痛みを感じて眠気が飛んだ。

「…!やれ、三成。
何をしやる…」

寝起き故に、平素より更に掠れた声で問えば、

「…ふん」

と人の肩に牙を突き立てた張本人はそっぽを向いた。

その銀色の頭の上で、尖った耳がぴくんと動く。


やれやれ、と内心溜め息を吐きながら、
その頭に乗せたままであった手を、そろりと動かして撫でてやる。

三成が満足げに琥珀色の瞳を細めた。

近頃三成は、気に入らぬ事があると噛み付いてこちらを従わせようとする。
そもそもは甘噛みだったのであろうが、
その様が愛らしく、唯々諾々と従っていたら、すっかり味を占めてしまったらしい。

少しばかり、子育てに失敗したような気分である。


どうやら頭をきちんと撫でて欲しかったらしい三成は、今や完全に瞼を閉じて、うっとりと胸元に頭を擦り寄せて来た。


ふわふわと柔らかい耳が、顎をくすぐる。
布団の中で、大きな尾が一度、ぽた、と床を叩いた。

暫く撫でていると、やがて静かな寝息が聞こえてきた。

「……三成?」

試しに小さく呼んでみるが、白い耳がぴくりと揺れるだけだった。

「…やれ、我を無理矢理起こしておきながら」

その寝顔は、何処までも穏やかだ。


頭を撫でていた手で、耳を摘み上げてみた。
ふにふに、ふわふわと指に心地好い。

「……ん、…」

ぴくんと耳を動かして、三成が我の腕の中で身じろぎをした。

細い腕が、ぎゅうと絡み付いてくる。


ふと、悪戯心が湧いた。


顔のすぐ下にあるその耳を、そっと食む。

ガジガジと歯を立てて、柔らかい耳朶を軽く押し潰すようにしてやると、

「……ふ、ぅ……」

形の良い眉を寄せて、三成が身じろぎをした。

しかしその瞼は、固く閉じられたままである。


「……やれ、」

ふ、と苦笑が漏れる。

頭頂に唇を寄せて、細い身体を掻き抱いた。

冷たかったその身体は、心地好い熱を持っている。


「…ん、…ぎょお、ぶ…」

うわごとの如く呟かれた己の名に、温かくなる胸に身を任せれば、
意識がふわりと真綿に包まれる。

眠気の糸が、再び我の瞼を固く縫い綴じ始めた。




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わあああ仮屋の時雨さまより相互記念で頂きました!わたしがきつなりかわいいいぃぃぃと連発してましたらなんと書いていただけると!ありがとうございます!きつなりがうちのわんこと重なる…!大谷さんはきつなりが可愛すぎて甘やかしたんでしょうねわかります!かわいいもの!
ありがとうございました(*´д`*)展示させていただきました!
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