【独占欲】


※15禁程度
※ちょい大谷さん病み気味


独占欲とはこれ程に醜いものなのか。
こんな気持ちを、今までわれは知らなかった。
そう思いながら、吉継は喉でクク……と笑った。
それは"愛"とか、あの憎き家康が唱える"絆"などとは違う、もっと底知れぬ醜い感情。

「われはこんなに"欲"深い人間であったか」

そう、ただの欲であり我が儘だ。
その欲がついには膨らみ、あの美しき獣を誰にも見せたくないと思うようになった。
あの獣が自分以外の者をあの紫紺の瞳に映すことすら堪えられなくなった。
自分だけの名前を呼べば、自分だけを求めればそれで良い。
ついには病に脳みそまで侵され狂ったのだな、と吉継はまた自嘲じみた笑みを浮かべた。
すらり、と自室の襖を開けると、暗闇に満ちた部屋の隅に銀色の髪を持つ美しい獣が居た。
数珠が3つ、その男を封じる様にゆるりと回り続けている。
閉じられた瞳の上の長い睫毛が息をする度、規則的に動く。

「三成」

男の名前を呼んだ。
しかし彼は返事をすることもなく、瞳を開くことすらしない。
ただじっと吉継の部屋の隅で、刀を抱きながら胡座をかいて座っていた。

「寝ているのか」

吉継は輿から降り、満足に動かない脚をひきずりながら三成の側へと近づく。
瞬間、三成の瞳が見開かれた。吉継には見えはしない程の速さでもって刀を抜き、彼の首元にピタリと当てた。
その、紫紺の瞳はただ綺麗にゆらゆら揺れて吉継の包帯に巻かれた顔を映していた。

「刑部、いい加減にしろ」

「なにが」

「いい加減、私をここから出せ」

「嫌だと言ったら」

ヒヒ……と悪戯っぽく笑う吉継の顔を見て、三成は不機嫌そうに形の良い鼻を鳴らした。

「斬る」

ぐ、と刀が首に押し付けられる。そのまま横に引けば首など吹っ飛ぶだろう。

「斬ればよかろ」

「何?」

「こんな身も心も醜い男など斬ればよかろ」

「貴様……」

二人の間を、数珠がくるくると回っていた。
三成は、動かない。
吉継もまた、微動だにしなかった。
ついには三成が大きな溜息をつき、刀を鞘に戻す。また刀を抱き、長い睫毛を揺らしながら瞳を伏せた。

「刑部、どうしたいのだ貴様は。もう三日だぞ」

「まだ三日か。随分と長い期間の様に感じられたな」

「まだとは何だ。私は暇で苛々していた」

「ヒッヒッヒ……短気な男は嫌われるぞ」

吉継は笑うと、三成の銀色の髪を愛おしそうに撫でた。
その包帯に覆われた指を下へと滑らせ、白い頬をなぞる。

「……」

三成はそんな吉継を無言で見つめていた。

「われが嫌いになったか。かように醜いわれが。なあ、三成、斬ればよかろ」

「……死ぬことは許さない」

「なら、ぬしはいつまでもここに居ることになるぞ」

「……"吉継"、貴様気でも触れたか。……私の、せいなのか?貴様の精神がおかしくなるまで苦労させたのはたぶん、私だ。……吉継、私のせいか、私のせいで貴様は」

秀吉公が死んで以来、怒り以外の感情を忘れたかのようなこの男が、ふいに悲しそうな顔をしながら吉継を見つめた。
友を復讐の道に引きずり込んだのは私だ、そんな負い目があったのやもしれない。

「そうさなあ……」

吉継の細い指が、三成の薄い唇に触れた。
渇いている。

「ぬしのせい、と言うのは当たりではあるな」

「…………」

「ぬしが美し過ぎるのが悪いのよ」

「吉……継……?」

三成の渇いた唇に、吉継の荒れ果てた唇が重なる。
渇きを潤す様にぬるりと舌を這わせる吉継の動きに、三成はぴくりと肩を震わせ刀を固く握った。
舌同士を必死で絡め、息が上がる。苦しい、と三成は脚をバタつかせたが、吉継はそんなことなど気にもせず、三成の口内を味わった。
やっと唇同士が離れ、三成の身体からくたりと力が抜ける。
彼は真っ赤な顔のまま、壁に身体をあずけ、上がった息を整えていた。
着物がはだけたせいで見える、その白く薄い胸が妙に色っぽい。

「ぬしが可愛すぎるのだ、三成よ」

「だ、まれ……私は男だぞ……」

「そうであったな」

吉継はヒヒ、と笑いながら三成のはだけた胸に顔を埋めた。
突起を軽く噛んでやると、大きく震える三成の身体。
男にしてはあまりにも良すぎる反応に、また吉継は声を上げて笑った。

「吉継、衆道に走るのか」

「はて……どうであろ」

「私は子など孕めんぞ。どうせなら女を……クッ…ああッ………」

三成の、猛ってきた下半身を思い切り握ってやると、痛かったのだろう、三成は苦しそうな鳴き声を上げた。

「そんなことは関係ない」

「……やめろ……吉、継……私はこんな……ぅ、ああッ」

「ぬしを独占したくなった。それだけよ」

「…………ッ……」

「それが嫌なら、斬れ、三成」

弄ばれながら、三成はふるふると首を振った。
その紫紺の瞳から、つつ……と涙が漏れたことに、吉継は気付いてはいない。
三成は握っていた刀を放し、長い腕を吉継の首に回す。

(これをここまで狂わせたのが私だと言うなら)

熱に浮されたまま、三成は思考を巡らせる。

(責任を取らねばならぬのは私だ)

三成は、半身を浮かせ吉継の唇に、自らの唇を重ねた。
触れ合った吉継の頬の包帯もまた、涙で濡れていた。







END







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はいはい電波電波。
たまには病めばいいなあってw
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