【花と蝶】


何故、貴様は蝶なのだ。
そう友に問われたことがある。
吉継はしばし無言で考えを巡らした後、目元を細めた。
おかしそうにクツクツとわらう彼を不審に思ったか、友―――三成は鋭い瞳を光らせた。

「何故、笑う」

「いや、そう怒るな。まさかぬしがそのようなことに興味を持つとは思わぬでな」

「貴様のことだ。興味はある」

他のものには全く興味を示さないくせに、自分が心を許した者のことは全てを知りたい性分らしい。
三成は身体を前に押し出すと「教えろ」と、吉継に詰め寄った。

「……そうさなあ、傍らに花があるのでな、蝶が似合いかと思ったのよ」

「……花?」

三成は首を傾げた。
しばし考えた後、何を思ったか顔色を変えて吉継の肩を掴む。

「貴様、いつのまに妻など娶った!私は聞いていないぞ!」

「妻……?何故そうなるか」

「花と言えば女だろう!何故、私に言わなかった!」

「いや、ちがう、違うぞ三成よ……これ、肩を揺するな……痛いわ」

「ち、違うのか……ならば花、とは」

それを聞くと、三成は安心したように座り直した。
おおかた、新妻に吉継を取られたとでも思ったのか。
彼は嫉妬深い質らしい。

「花は」

吉継はそんな三成を見て、楽しそうに笑った。
三成を見据えたまま、言葉を続ける。

「ぬしよ」

吉継はその指をゆっくりと上げ、三成の顔を指した。
きょとん、とした三成の顔がある。

「何?」

「蝶は花が無ければ生きていけぬ。花は蝶があればこそ美しく咲く。まあ、そんなところよ」

「私が、花だと?」

三成は、真っ赤になって固まった。それを見ていると流石に吉継も恥ずかしくなったのか「ぬしの望みは叶えたぞ」と言い残し、輿を浮かせて三成の部屋を出ていった。

「刑部が、蝶。私が……花…………?」

三成は何度もそれを繰り返すと、視点の定まらぬ瞳で庭を見た。
白い蝶が、真っ赤な花の周りをひらひらと漂うように飛んでいる。
仲睦まじくも見えるそれは、なる程自分と吉継の様にも見えた。
戦場において真っ赤に咲く鮮やかな花と、それを見守る様にゆるやかな動きで追い掛ける白い蝶。

「……くだらん……」

三成は、口元を手で塞いだ。顔の熱さは収まらず、彼はどうにも動けないでいる。





****





「くだらぬことを言ったものだ」

自嘲気味に笑うと、吉継は呟いた。
果たして自分は、蝶、などという綺麗なものであろうか。
この、醜い病身。
真っ黒に染まった腹。
血で薄汚れてしまった手。
それでも、自身は蝶でありたいと、願う。
邪悪な、漆黒の蝶であってもいい。
三成の、あの真っ赤な血を浴びても尚美しく、汚れることの無い花のような男の、傍にいれるのならば。




END


―――――――――――――――

電波パート2。
三成は大谷さんのことを真っ白で綺麗できらきらした蝶だと思ってる。そう信じて疑わない。
大谷さんは自分のことを、三成を騙している邪悪で黒い蝶だと思っているらしいっていう補足。隠し事をしている(四国のこととか)=騙してるってことで罪悪感があるんじゃないかと。
三成はお花さん。
よくわからん話だ。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -