【9月15日】


*司馬亮関ヶ原ベース
*だけど微妙にBSR
*転生ものだと思われる
*現代パロで二人とも大学生とか


日ノ本全土を巻き込んだ、天下分け目の関ヶ原の戦い。その、西軍の石田三成と東軍の徳川家康が天下を賭け、戦い、決着がついた日が9月15日である。
当初西軍有利かと思われたその戦いは、石田三成の人徳の無さと、小早川秀秋の裏切りにより、勝利を得たは東軍、徳川家康。
なんの因果か、小早川の寝返りにより戦死した武将と、彼、"大谷吉継"は同じ名前であった。
"石田三成"にしてもそうだし、"徳川家康"にしてもそうだ。
何故か、この町には、かつて関ヶ原で争った武将と同性同名の者が多い。

(単なる偶然か)

吉継は、部屋で星を仰ぎながら、床に仰向けに寝ていた。
長い黒髪は邪魔なので部屋ではひとつに縛っている。そのまま眠る気だったので、簡素な部屋着を着ていた。
星が見えるようにわざわざ作ってもらった天窓からは今にも降り出しそうな程の煌めきがいくつも存在している。

(かつて、われは星が落ちてくるのを待っていたような気がする)

しかし、それがいつだったかは、何故待っていたのかは、吉継には思い出せなかった。

「刑部、いるか」

「三成か」

同居人の声が、した。
同居人はノックもせずに堂々と部屋に入ってくると、だらしなく床に転がっている吉継を見てため息をついた。
今帰宅したのか、部屋着に着替えるのも面倒だったのか、彼は私服のまま、吉継のところへと足を運ぶ。

「何をやっている、刑部」

「星を、見ていた。ぬしは何用か」

「貴様、今日1コマ目を欠席しただろう。ノートを貸してやりに来た。病院に行ったようだが、身体は大事ないか」

「薬をもらいに寄っただけだ。大事無いわ」

何故か三成は、吉継のことを刑部と呼んだ。本人は無意識的らしく、何故そう呼ぶのか自身でもわからぬらしい。

「星は見えるか」

「ああ、ぬしも見よ」

「興味は無い」

「そんな悲しいことを言うな、やれ、隣に寝よ」

「……貴様が言うなら」

吉継は、持ち前の演技力で酷く傷ついたような顔をした。
それを見て、しぶしぶと言った風に、三成は吉継の横に仰向けに寝る。

「綺麗であろ」

「……そうなのか」

「やれ、流れ星よ。願い事をせよ、三成よ」

「くだらんな」

三成とこうして共に寝ていると、不思議な感覚が沸き上がってくるように、吉継は感じた。

(この日、われは)

三成を想い、三成の為に死んだのでは無かったか。
西軍が勝てぬのはとうに知っていた。
しかし、一縷の望みを胸に、病に蝕まれた身体に鞭打って、勇猛果敢に戦ったのだ。
案の定、裏切りにより大谷軍は敗走。大将、大谷吉継は自害した。
最期まで、三成を気にかけた。
腹が痛いと言っていたが大事ないのか、彼は今どのような戦況下にあるのか……
そんなことを考えながら死んでいった気がする。
ただ、三成の為に生きたことに一切の悔いは無かった。

(何故、われにそのような記憶がある)

くだらない言葉で言えば、前世というヤツなのか。

(まさか、いや、しかし)

頭で否定しようとしても、奔流のように記憶が駆け回る。
三成とは、親友で。
彼の為なら命を捨てても良いとさえ思って。
しかし彼も、

(その後負けて惨めに処刑されたのだ)

「……部」

(ああ、そうだ。われは死ぬ前に三成と星を見たかった。さんざめく、屑星を。何故、そんな記憶が)

「……刑部!大事ないか!」

急に、三成が起き上がり、吉継の肩を揺すった。
ハ、と吉継は我に変える。その黒く濡れた瞳から、ぼろぼろと涙が零れていた。
何故自分が泣いているのか、わからなかった。前世の記憶があるのだとしたら、泣いているのは前世の自分なのか。
三成とこうして平和に生きているのが嬉しいのか。

「何故、泣く!何処か痛いのか!秀吉様を呼んでくる」

「ちがう、ちがうのだ三成よ、ちがう、行くな、行かなくて良い」

立ち上がろうとした三成の腕を、吉継の細い手が必死に掴んだ。
ほとんど縋り付くように、吉継は三成の身体に抱き着いた。

「ここに居よ、われと。われと星を見よ」

「刑、部?」

「われは、ぬしと星を見たいのだ、落ちていくそれを、見たいのだ」

「何を言っているのかわからんぞ」

三成は怪訝そうな顔をした。
いつも冷静な吉継がここまでうろたえているのは珍しいことである。
それに、縋りついて来る吉継を可愛らしいと思ってしまい、三成は再び身体を横たえた。
まだ、吉継は泣いている。

「われは何処にもいかぬ、だからぬしも何処にもいくな」

「……刑部、言うべくも無い。私は貴様と共に居る」

三成が、吉継の頭を優しく抱くと、その額に軽い口づけをする。
ちょうど、二人を見守るように数個の星がキラキラと地上目掛けて流れて行った。





END





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9月15日 大谷吉継関ヶ原にて自害

9月22日 敗走していた石田三成捕縛、その後六条河原にて処刑

関ヶ原の日より遅れましたが二人のご冥福を願ってます。
あの世でも仲良くしていてください、大好きです。
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