いつもと同じはずだった……
いつもと同じように妖怪の大群を敵に相手していた一行。その多さに流石に皆は苛立ち、あちらこちらから愚痴がこぼれる。
『あぁ、もう!!
毎度のことながら
この大群はなによ
うっとしぃ!!!』
「なんか今日量多くねェ!?」
『ンな事言ったって
しょーがねぇつーの。
さっさと片付けちまう
しかねぇだろ』
「あーー、腹減ったーー!!」
何かが違う
じゃあ、何が違う?
何一つ変わらない
いつもと同じでボキャブラリーのない
返答のその声
見飽きるほど見てきたその顔
一体何が変わるっていうの??
なにが かわるんだろう ね?
「なー、八戒終わったら
メシ食えるー?」
『今回はちゃんとお仕事を
済ませたとしても、ご飯にありつけるか
どうかは別だと思いますよ?』
八戒のその言葉で文句を言う口には、封がされる。
いつもと変わらない穏やかな口調ではあるが、その表情には少し焦りが見えた。
三蔵はというと、それはもう誰が見てもわかるくらいに苛立っていた。鋭い眼光の先に立ちはだかるは、この大群の妖怪を生み出したであろう大元の女妖怪だった。
その女妖怪の足元に転がるのは、かろうじて人の形と取れる繭だった。その繭中には、大事な仲間が捕まってしまっているとあって下手に手を出せずに、ジリジリと距離を詰めていくことしか出来なかった。
《最高僧である三蔵とあろうものが
情けないものねぇ》
『黙れ。その口を閉じねぇと
鉛玉をテメェの脳天にぶち込むぞ』
《オホホホ
分が悪いのはどっちなのかよく理解なさって?
私はを殺そうものなら、
その前にこの子の息の根を
止めてやるまでよ》
脅し文句を飾るように、自身の長い爪をその繭に構える。その後もなにやら女妖怪の話は続く。ウダウダとダラダラと。はっきりいってそんなの時間の無駄でしかなくて、三蔵は自分がいながらにして彼女を護りきってやれなかったことに不甲斐なさと、苛立ちを抱え、その箍(たが)が外れる。
「黙れ、つったよな。ソイツは返してもらう。
それと同時にお前には文字通り消えてもらう」
《クッ、なにをす……》
女妖怪が返答なんてまるで耳に入れる気がない三蔵は経を唱え、あの決まり文句を叫んだ。
「『魔戒天浄!!!!!!!』」
《ぎいぃやあぁぁぁ!!!!!》
女妖怪は身体が裂け、散り散りになっていくのとともに叫び声をあげ消えていく。消える瞬間三蔵は声を聞いた。それはすぐに何をさしていたのかを理解したのだった。
『早く開けろ!!!!!』
「んな事言ったって、
厳重に巻きすぎだろアイツ…。
腹減って力でねぇよー…」
『アン〇ンマン の仲間かよ…』
「え?あんぱん!?
でも俺に肉まんのがいいなぁ」
『いいから早くしろ
バカざる!!!!!』
大元を倒した言うのに三蔵の苛立ちはなんだかおさまることなく、逆にその表情には焦りさえ感じる。
そう、そこにいたのはいつも一緒に旅を続けてきた彼女ではなかったのだ。
『え、三蔵…』「誰コレ…」
《私を倒してしまったことを後悔するといいわ》
いつもの彼女の代わりに 繭からでてきたのは一体
ダ レ ?
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[モドル]