*並行世界*

あれから数日が立った。


あの街からあまり長い道のりではなかったが、一行は無事に次の街へとだどりつくことが出来た。
地図は地形変動などで街がなくなったりしている可能性があるので、ある程度の目星程度にしか宛にならない。
コンパスはただひたすらに方角を教えてくれる、それだけだ。

いつ食料がそこをつくかわからない生活のため食料調達は何より大事であり、またヘビースモーカーも2人ほどおるのでタバコの調達なども必須になってくる。




「あ、できればサケもな!」



…らしいです。



「かわいい女の子がいたらいーんだけどな」




……ここからは絡まれるとめんどくさいので総スルーでいきましょう。


そんな中葵たちはお酒を買うために立ち寄ったCafe/Barに立ち寄っていた。



「こんにちはー」
「なー、ここ かふぇ ってやつなんだろー?なんか食ってこうぜー、なぁ、さんぞーー!」
「ちょっと、悟空うるさい!」





一応表の看板に書いてある時間はすぎているようだが、まだお店を開けた時間からあまり時間が経ってないからなのか客もおらず、お店の人が見当たらない。葵はお店の奥へと続くのれんへと声を上げる。




「扉も空いてましたし、まだやっていないというわけでもないと思うんですが…」



そう八戒がつぶやいた時奥から子供の声が聞こえた。するとまもなく足音がしてのれんをくぐってお店の人が出てきた。


『あ、ごめんね〜。この子をちょうどトイレに連れてってて』
「いいえ、大丈夫です。僕達こそ開店まもなくに押しかけちゃってすいません」
『気にしないで!そんで何のようだっけ?』



彼女は話を戻した。
八戒がお酒の買い付けを交渉してる間葵はその小さな子供と目が合った。子供は母親である彼女の服の裾をつかみ多少警戒してる様子だった。
それも仕方ないだろう。急にこんな大人が押しかけて来たのではびっくりもする。



「お、可愛い顔してんな。大きくなったら美人になるんじゃね?こっちこいよお兄さんが遊んでやるぜ?」
「やめろよエロ河童!怖がってんだろ!俺が…」
「二人ともやめろって…。ごめんな〜」




悟浄と悟空が話しかけた時は母親の服をギュッと握り直していたその手から力が抜ける。そうしてその小さなもみじのような手を葵に向けた。




『あら、珍しい。清蘭が初めての人と遊ぼうとするなんて』
清蘭…



その名前を確かめるように口に出した。何かが後ろ髪を引っ張る。不意に後ろを向くも、そこにいるのは三蔵が待ってる間客席に座っているだけ。




「お母さん、お名前は…」
『え?私?私は朱麗っていうの』



このあとすぐに悟浄が口説く。
もちろん子供がいるということは旦那さんがいるということで、そんなことはわかっているもお約束のように尋ねるのだ。

だがそんなくだらない話は葵の耳には入ってこなかった。
清蘭と朱麗。聞いたことがあるような、よく考えると会ったことがあるのような、そんな懐かしさが胸いっぱいに広がる。



『どーーんっ!』
「わっ!?」




そんな考え事をしてると清蘭がかけてきて体当たりをかましてきた。
しゃがんでいて体制が不安定だったために葵はその場に尻餅をついてしまう。




『清蘭!なにしてるの!』
「あ、いえ、大丈夫ですよ。清蘭、おいで?」




葵に招かれるようにして名前を呼ばれた瞬間また走り出し今度はその胸に飛び込む。
その小さな体、小さな手を愛おしく思ったのはとても不思議だった。

それから葵はみんなが買い物をしている間だけという約束で清蘭と遊ぶことになった。




「お腹、大きいですね」
『もうすぐ産まれるの。なのにこの子ったらいたずらはするしお姉ちゃんになれるのかしら…』
「きっと、大丈夫ですよ!」



根拠などなかった。赤の他人だったから割り切って言えた、というわけじゃなくてなにかこう確信を持っていた気がした。そう、この人の子供で、この子なら大丈夫。




「ねぇ、清蘭?清蘭はもうすぐお姉ちゃんなるんだって」
『おねぇしゃん…?』
「そう、お姉ちゃん。清蘭なら強くてかっこいいお姉ちゃんになれるわ!ママのことたくさん助けてあげてね?」
『たすける…?かっこいー?』
「うん!すっごくすっごくかっこいい!」



このとき一瞬自分と重ねた。自分はかっこいい姉であれだろうか。母親を助けられていただろうか。自分がいなかったら莉藍はどうなっていたのだろうか、そんなことが頭を駆け巡った。




『がんばう!』




理解しているのかはわからなかったがそう返すと清蘭は葵に強くハグをした。葵はその体を優しく包むようにハグを返すと頭をなでてやった。

しばらくするとみんなが迎えに来て葵は清蘭と朱麗へ別れを告げる。



『遊んでもらっちゃってごめんね〜。また今度来る時は寄ってね!』
「はい、必ず!」




そしてお店の扉に手をかけたその時ふと思い出したことがひとつ。





「そうだ…」
『どうかした?』
「朱麗さんは今、幸せですか?」



















この街は小さな街。
食料などを買い足しがすんだのでそのまま通過することにした。一刻も早く牛魔王を討伐するためだ。


街を出て少し進んだところで三蔵が声をかけてきた。




「葵」
「ん?」
「なんだったんださっきの質問」
「んー…わかんない。なんか聞きたかったの。でも…」






もちろん!幸せよ!
旦那と、清蘭と私と
それからこれから生まれてくる赤ちゃんと。
そんなふうに家族で暮らすのが
私の夢だったの!


だから、幸せ!






「幸せそうで良かった。…よし!早く牛魔王なんか倒しちゃって朱麗さんとこに生まれてくる新しい赤ちゃん見に帰らなきゃー!進めジープ!!」
「キュ、キュ〜」



















***
文字通りおまけその1です!
まぁ分身の一行から別れてから、って感じです!
その1!があるってことはその2!とあります!←
お察しのとおり?次回は清蘭と朱麗さんの一行の方です!
同時に街を出て同時に次の街へとたどり着いて同時にそんな場面にあってるのです。


今読んでるあなたもどこか別次元のあなたが同じように行動してたりして…?


なんてある意味ホラーか!!!←


いつもとすこし違うのは冒頭の悟浄さんが説明に割り込んでくるとこですね!
おまけなのでそんなこともまぁいいかな!って感じでした 笑



次回はその2をお送りします〜!

では!



読んでくれてありがとうございました。

2015.12.09
黒音 未唯


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