1−1
あの時、素直にセラを信じていれば 
ちゃんと話を聞いていれば
こんな事にはならなかった

暗い闇の中、絶望にとらわれた。

それでも確かに光を見たんだ
仲間と築き上げた奇跡のような運命

この烙印は 同じ運命を背負わされた証 
一緒に交わした約束の証
絶望だけじゃない、守りたいものがあったから

コクーンの破滅 私達は世界を壊した 

ファルシという飼い主に逆らって鳥かごから飛び立ったのだ。

神の孤児ラグナログになって世界を壊し、世界を支えた。

外なる世界からの使者。

パルスのルシ

コクーンの人間がパルスのルシになるなんて考えられただろうか。

それでも私は今ここにいる。

パルスのルシとして繭を崩し使命を果たした。

大切な仲間も手に入れた。

つらいこともあったけど…




不意に重力に逆らったように体が軽くなり、自分の体が柔らかいクリスタルに包まれているのが分かった。

体は動かないのに意識は鮮明だ。

使命を果たしたルシはクリスタルになって永遠を手に入れる。

セラだってそうだった。それなら私達もそうなのだろうか?


クリスタル=永遠の眠り

としたらこのままずっと

不思議と絶望は沸いてこなかった。

なんだか眠くなってきた…

このまま寝たら永遠の眠りにつくのだろうか?

それともファングとヴァニラのように再び蘇るのだろうか?

「目を覚まして…」

頭の中で声が聞こえた


…ヴァニラ?


その瞬間に体が温かくなって硬直が溶けた

目を開けば繋がった2つの世界が目に飛び込んできた

夢か?現実か?

私は指を動かしたりして体の感触を確かめた

「それでね〜おーっきなチョコボがいーっぱいいたんだっ!」

遠くに人影を見つけ私は顔を上げた

セラ…?

嬉しそうに抱き合うスノウと少女を見て私の胸は感動で震えた

「お姉ちゃん!」

「セラ…すまなかった…許してくれ…」

「おいおいそれはこっちのセリフだろぉ?結婚を、許してくれ!」

「信じるよ。おめでとう」

セラは私がいなくても大丈夫だ。

ずっと背負っていた心残りが晴れて力が抜け落ちた。

こころから信じた仲間に大切な妹を

今まで守ろうと必死に努力してきた妹を託した瞬間に私の体は

温かい光に包まれた



―ありがとう






「おねえ…ちゃん…?」

セラの声が頭の中に響く

ああ、この感覚は

「義姉さん!」

永遠の

「ライトさんっ!!」

眠り…











4年後

「じゃあ母さん、行ってくるよ」

僕は写真の中で微笑む母親にそうつぶやいて家を出た

これは日課だ。

うきうきとしながら向かう。

かつての仲間しか知らない

あの世界一美しい場所に

世界一美しいクリスタルのある場所に


真紅の薔薇の花束を持って

パルス行きの船に乗り込んだ


あの出来事からもう4年

パルスではコクーンの人たちが定住し、少しずつもとの生活に戻りつつあった。

それでも僕の心は何にも変わっちゃいなかったんだ

大切な人を失った4年前のあの日から

ボーっとしながら飛空挺を降りて僕はテレポの冥碑に足を運んだ

コクーンの人間はテレポの冥碑の使い道を知らない

あちこちに存在する冥碑ただ色の違うバージョンだと思っているのだろう。

どちらにしろそっちのほうが好都合だけど…


僕はテレポの冥碑に手をかざし光と共にヤシャス山に飛んだ

僕達だけが知ってる秘密の場所。

僕の宝物

切り立った崖から見える景色は相変わらず絶景だ

むせ返るほどの草木の香り

ひときわ花の多い場所を目指して進めば目的のものが太陽の光を通して光輝き僕の足を速めさせる


手に持った真紅の花束が崩れないように走っていけば

ダイヤモンドなんかよりずっと美しいクリスタルが存在する


「ライトさん…」

クリスタルの中の彼女の名を呼ぶ

何回目の事だろうか

会えた事が嬉しくて僕は思わずキラキラと光るクリスタルに手を伸ばす

「お久しぶりです。」

久しぶりに見た残酷なまでに美しい姿と

冷たくも綺麗なクリスタルを見れば心を抉られたようにひどく痛む。


彼女が僕達の前でクリスタルとなったのはもう4年前の事

なぜなのかは分からない

大切で愛しくて守りたいと誓った彼女がクリスタルになったとき

僕は深く傷ついた。かなりの期間ふさぎ込んで泣いていた。

それでも永遠を手に入れた彼女は想像を絶するほど美しくて

4年たっても色あせず僕の胸に彼女の存在は刻まれている。


彼女以外見えないんだ。



「薔薇の花を持って来たんです。去年植えた花達も元気良く育ってるようなので安心しました。」

彼女がこうなってからは1年に2回は会いに来ている

彼女の誕生日と4年前の丁度今日、彼女がクリスタルになった日。

本当は毎日でも来たいのだが、ここには魔物
も多く存在する。

彼女に守ってもらった命を落としてしまう可能性だって考えられなくはないから年2回に留まっている。

もっぱらその日が待ち遠しくて仕方がないのだが…

「寒くないですか?景色はいいですけど夜は結構冷えますもんね…」

太陽の日差しにクリスタルが反射して光る

それが僕の声に反応してくれているようで笑みがこぼれる

「僕今、17才ですもうすぐで18才になりますが…。身長もけっこう伸びたんですよ?」

きっとライトニングの身長より高いと思う

「ライトさん…」

同然反応は無い。無常に悲しくなる

「もう、4年ですよ…?僕達ばっかり歳とっちゃってます。」

胸に熱いものがこみ上げてきて一筋頬に伝った。

ファングとヴァニラのように何百年後に目を覚ますとしたらもう生身の彼女に触れることは出来ないだろう。

もう会えないなどと思いたくなくてずっと我慢してたのに今日だけは胸が張り裂けそうで悲痛な叫びをあげていた

「永遠なんてもう十分ですよ…

いつになったら目を覚ましてくれますか?」

「もう4年もたちました…僕は…あなたをずっと待ってます。

だから早く目を覚ましてくださいよ…ライトさん!じゃないと僕は…っ!」

少年の時あこがれていた彼女に今では恋している。

それをひたすらに待っているのはそうとうつらい。

彼女は近くにいるのに遠くて…

彼女の前では泣かないと決めたのに我慢ができない

僕の涙がぽとりとクリスタルに落ちてつつつと表面をつたう

ふわりと風が吹いて花びらが空中を舞った




その刹那、

僕の涙が伝った後が光を発し ヲルバで見たようなキレイな小さな光となった

綺麗で輝く光が辺りを制し、眩しくない光の中に人影を見つけ僕は息を呑んだ

「泣くな。ホープ」

ずっと夢見ていた懐かしい優しい声に僕は無我夢中で手を伸ばした

いままでどんなに手を伸ばしても触れる事ができなかった彼女にかすかに手が届いた

「ライトさん!」

手を伸ばして恐る恐る彼女の体に触れる

柔らかい。

光が消え花びらだけが舞った世界で僕は彼女の体を壊れるほどに抱きしめた

夢…?ううん 現実。

4年間胸に思い描いてずっと想っていた対象が目の前に現れた

きっと今なら天に昇れる…



ライトニングが4年の時を経てクリスタルの永遠の眠りから目覚めたのだ。

「奇跡…ですか…?」

「そうかもな、お前のおかげだ。眠ってる間お前の声だけが聞こえてた。ずっと。

願い続けていたらお前の涙がクリスタルを溶かしたんだ」

「ライトさん!」

「夢じゃないんだよな?まるで奇跡だ。」

「ライトさーんっ!」

子供みたいに泣きじゃくる僕の頭をふわりと撫でてライトニングは優しく微笑んだ

嬉しくて 愛しくて さっきとは全く反対の意味の涙が零れ落ちた。

4年間ずっとつらい思いをしていた。
その時間が僕の中で彼女の存在を大きくしていた。

「ホープ…大きくなったな…」

成長ぶりに驚いているのだろうか

「そりゃそうですよ。4年間身長についてはかなり伸びましたから」

「4年間…眠っていたのか?ファングとヴァニラは?」

僕は無言でコクーンを支えるクリスタルの柱を指差した。

「そうか…」

あの2人はまだ眠っている。コクーンを支え続けてくれている

「4年か…短く感じたな。お前の声以外は聞こえなかったし、それがいつの話だか…」

ライトニングが目を伏せる

「僕にとってはすごく長かったです。長くて長くて…つらかったです」

「そうか…すまなかった」

ライトニングがあやまる事では無いと思うんだけど…

「ホープ。変な事言っていいか?」

彼女が声のトーンを上げたので僕は はい?と短く返事を返した

「腹が減った。」

「え…」

「腹が減ったと言っているんだ。」

すこし恥ずかしそうに視線をそらしたライトニングを見て僕は思った

よく考えれば彼女は4年間何も口にしていないのだ。

クリスタルだったから栄養面に問題はないだろうが…



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