長編2 | ナノ
ごく普通の、ありきたりな毎日



最近、よく同じ夢を見る。

見覚えのない場所に、私は座り込んでいるみたいで。

いつも思うのは、ここはなんて寂しい場所なんだろうってこと。

小さな女の子が、男の人と手を繋いでいる後ろ姿が見える。

何かを叫んでいるように見えるのに、何故かその声は聞こえない。

それからいつも、次の景色に場面転換する。

そこには、やっぱり見覚えのない男の人たち。

顔はよく見えないけど、どこか懐かしい感じがする。

ここでも一人は叫んでいて、もう一人は……

なんでだろう?

よく見えないはずなのに、穏やかな顔をしてるって分かるんだ。


「おはよう、セレナ」
「おはよー……」
「どうしたの?疲れてる?」

一緒に廊下を歩いている友達に、顔を覗きこまれた。
もうすぐ本日最後の授業なんだけど、起きていられるかな。

「なんか最近寝付きが悪くて、ふあぁ……」

大きなあくびをしたら、見事に友達にうつる。
午後のこの時間は何も無くたって眠くなるよね。

「最近同じような変な夢を見る気がするんだけど、起きるとほとんど忘れちゃうんだよね」
「変な夢?」

あくびを噛み殺しながら、友達が首を傾げた。
私は廊下の窓から遠くの空に視線を移して、夢の内容を思い出そうとしてみる。

けど、思い浮かんだのは何も無い寂しい空間のことだけ。

「同じ夢だとすると、何かの暗示かもね」

私が頭を捻っているのを見た友達が、何の気無しにそう言う。

「暗示ねえ……
あんまり良い夢じゃない気がするんだけど」

明るい内容じゃなかったことは分かる。
やっぱり私、疲れてるのかな?

「最近課題ばっかりだったもんね。
って、もう一つ山が残ってたんだった……」

そう言って友達は肩を落とした。

彼女が言う山とは、うちの学校で一二を争う難攻不落の教授のレポート。
私も、まだ資料集めの途中だったりする。

「今日の帰りに図書館行こうと思うんだけど、一緒に行く?」

私の問いに、友達はGHSを開いて予定を確認した。
そしてもう一度、さっきよりも大袈裟に肩を落とした。

「やば、忘れてた。私補講あるんだった」
「それは……頑張ってね」

私はただただ友達の肩を優しく叩くことしか出来ない。

そうこうしている内に講義室に着く。
ちょうどチャイムが鳴り、先生が入ってきて講義が始まる。

私はあくびを噛み殺しながら、今日もありきたりな一日を当たり前に過ごす。

18年間変わらない、ごく普通の平和な毎日を。


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