09-03  [ 20/72 ]



時歪の因子を破壊し、正史世界のクランスピア社前に戻ってきたセレナ達だった。

ルドガーの手の中には新たなカナンの道標”ロンダウの虚塵”が握られている。
ルドガーがそれを見つめていると、ガイアスが声をかけた。

「俺もカーラの為に王位から退こうと考えたことがあった。しかし結局は王であることを選んだ」

「ガイアスは、王っていう”仕事”が好きなんだな」
「ふっ、エレンピオス流の考え方だが、外れてはいないな」

ルドガーが微笑んで言うと、ガイアスも少しだけ表情を緩めた。
しかしすぐに厳しい表情に戻ると、ルドガーに問いかけた。

「分史世界を破壊し続ければ、その過酷さにいつかは心が蝕まれていくだろう。
ルドガー、一人で戦い続ければいつか孤独に飲み込まれるぞ」

その射抜くような眼差しに、ルドガーは返答するのも忘れてガイアスを見返しているだけだった。

「私が、ついてるから」

そこにセレナがルドガーの横に並び、笑顔で答えた。

「だから大丈夫」

セレナは今度は真っ直ぐとガイアスの紅い瞳を見つめた。
ガイアスはそれを、瞳をそらさず受け止めた。
さらにその横からエルが得意気に顔を出す。

「コドクって一人ぼっちってことでしょ?ならルドガーはだいじょうぶ。エルたちがいるもん!」
「あら、言うことだけは一人前ね」

エルの態度にミラが呆れたように返すと、エルは褒められていると思ったのか胸を張った。

「そう、エルはいちにんまえ!」

その子どもらしい可愛さに、ルドガー、レイア、セレナは両手を叩いて笑い、ミラもやがて声を出して笑い始めた。
ガイアスも満足そうだ。

「ねえガイアス、仲間は、多い方がいいと思うんだけど」
「そうだな、手伝いが必要なら言ってくれ」

レイアの言葉に、ガイアスも心得たとばかりに頷いた。

これで、ルドガーはさらに心強い味方を得たのである。

(大丈夫。みんなもいるし、私もいるから。約束したもの)

セレナはルドガーの横顔を横目に見て、改めてそう心の中で誓った。

「あ、そう言えばアーストのこと、何て説明しよう……」

セレナは思い出した。

もし今後ガイアスと行動しているところを例の同僚たちに見られたら、何を言われるか分かったものではない。
紹介しろと言われることだけは容易に想像がついたが……

先手を取って話しておくべきか、面倒だからバレるまで隠しておくか……

セレナの悩みには、さすがのガイアスや他の仲間たちも気が付かないのだった。



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キリが悪かったのでpartを分けましたが、短かったですね……
次章はオリジナル展開となります。



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