07-04
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焔に焼かれて地に墜ちた大精霊アスカは、もうセレナ達に攻撃して来る様子は無い。
「はぁ……はぁ……」
「だいじょうぶー!?」
セレナが息を整えているとエルが駆け寄ってきた。
それに声にならずにこくこくと頷いて返すと、エルはほっと胸をなでおろした。
「やっぱりアスカは時歪の因子じゃない」
ルドガーがアスカの前まで歩み寄ってから確認して、仲間達に振り返る。
「どうするよ?」
「……このまま解放しよう」
アルヴィンの問いにルドガーが答えた。
もう一度捕らえようにも、ケージは先程ジランドが壊してしまったのだから。
「そうだな、どの道この世界は"壊す"んだ」
非難しようとしたエリーゼとティポを遮って、アルヴィンが小さく呟く。
その言葉に、ルドガーは硬い表情を返しただけだった。
すると地に伏せていたアスカが弱々しく起き上がり、やがて大きな羽根を広げて舞い上がった。
そのまま飛んで行くかと思われたアスカだったが、ルドガーに顔を向けると威厳のある声で人間の言葉を話し始める。
「クルスニクの末裔よ、まだカナンの地を見つけられていないのか」
「しゃべった!?」
ティポが元々大きく開いている口をさらに大きく開けて驚いている。
「始祖と同じく我らとの共栄を望むのなら、カナンの地へ急ぐことだ。
そろそろ2000年。オリジンが魂を浄化するのも限界だろう」
「オリジン……魂の浄化?」
ルドガーは、聞き慣れない単語に首を傾げた。
「"無"を司る大精霊だ」
それだけ言うと、アスカはなんと部屋の隅で頭を抱えていたジランドに襲いかかったのだ。
ルドガーはとっさにエルを抱えてその光景を見せないようにし、セレナも2人の前に壁になるように立つと、自らも目を背ける。
鈍い音が響き、ジランドが床に伏せた。
彼はもう、ピクリとも動かなかった。
「今ならクロノスの気持ちもわかる」
最後にそう残し、光の大精霊アスカは中央ドームの開いた天井より大空へ飛び立って行ってしまった。
「みんな大丈夫!?」
「って、これは……!」
その時、後を追って来たのだろうレイアとジュードが部屋に飛び込んで来る。
2人は倒れたジランドや壊れたケージ、銃弾の跡等を見て、どうやら何があったか察したようだった。
「こっちはハズレ。時歪の因子はいなかったよ」
アルヴィンがジュード達にこれまでの経緯を簡単に説明した。
「僕達の方もハッキリした情報は得られなかったよ……」
「でも気になる話を聞いたの。
ヘリオボーグの先の荒野で、髪の長い女みたいな精霊を見た、って言う話」
「それって……!」
ジュードとレイアの言葉に、エリーゼが反応する。
アルヴィンとローエンも心当たりがあるようだった。
「ヘリオボーグの先って言うと、次元の避けた丘あたりか。行ってみようぜ」
「私はジランドさんを埋葬してから行きます」
「手伝います」
アルヴィンが歩き出そうとすると、ローエンとエリーゼがジランドの傍に膝をついた。
「意味有るのかよ、それ」
アルヴィンが苦い顔をする。
「ありますよ。
……少なくとも、あなたにとっては」
ローエンはジランドから視線を動かさずにそう言った。
その言葉にアルヴィンが静かに目を見開く。
そして視線を落とし、小さく感謝の言葉を告げたのだった。
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そう言えば、逃がさない方の選択肢は自分では選んだことないです。
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