Neither Creed nor Pride

「あの風間が…!」

『…かおるちゃん…凄い…』


前半の試合終了の合図が鳴った。
聖蹟が先制したけれど、その後直ぐに点を取られて1対1。

正直、苦しい状況だと思う。

4人がかりで成神を止めようとしても、成神は止まらない。それに、聖蹟トップクラスの体力と技術力を持った風間が挑むも、かおるちゃんは軽々と避けたんだ。それも…いつもクールなプレイをするあの風間が顔面でボールをキャッチしてまで。
…って、アレ? 風間の顔…真っ赤じゃね?


「先輩…
マジ鼻血が止まらねぇっス」

「今までそれどうしてたんだよ!?」

「まさか血飲んでたのか!?」

「鼻ちょっと曲がってねぇか!?」

『風間、鼻の頭の方を摘まんで少し下を見て。鼻血が止まるまでそれキープね。間違っても上向くんじゃないよ。』


風間には指示を出しながらティッシュを渡し、残りの皆にはボトルとタオルを渡してまわる。
その間、
柄本君は感動および(チームの役に立てない)申し訳なさでポロポロと涙を溢し、君下先輩に怒られたり大柴先輩に頭突きされたりしてた。なんて感情豊かな子なんだ。私が高校時代の時なんか…もっとひねくれてた気がする。

そんなイベントが起きつつも、戻って来た聖蹟の控え室。皆息が切れ切れだ。そんな中、監督が口を開く。


「前半は幸運にも1対1だ。だが、明らかに試合内容では負けていた。お前達はどう思う?」

「負けてるってのは何かおかしくないっスかねー、同点だし。誰か負けてる人いましたっけ?」

「いないな。全然いない。」

「負けてねぇ」

「負けてねぇし」

「いや むしろ勝ってる」


風間とキャプテンを筆頭に、皆怒ったようにそう口々に言い出した。皆もしかしたら挑発に乗りやすいタイプかもしれない。
その様子に、監督は「よろしい」と言って後半の作戦を話した。どうやら…最も危険なかおるちゃんにボールを渡さないよう、前線の4人が邪魔するらしい。


『(なるほどなぁ…サッカーって奥が深いなぁ…)』

ガンッ

『ひっ』

「よぉ喜一ィ。
どうした? もうへばったか?」

「珍しいな…お前が話しかけるなんて」


ガンッてのは、君下先輩がボトルをロッカーに投げつけた音。あまりに急で大きい音だったから吃驚して変な声を出しちゃったじゃん。場がシーンって静まり返ってるよ。
…にしても、この2人、仲悪かったよな。


「…………かかった……」

『…水樹キャプテン、はい、タオル。』

「…拭いて」

『えっ、思わぬ役得キタ。』


君下先輩が投げたボトルの水を被るなんて…ついてないのか、ある意味ついてるのか。取り敢えず、水樹キャプテンの顔と頭をワシャワシャ拭けるから、少なくとも私はラッキーだな。うん。


「どうしたよ、珍しく優等生じゃねぇか。本来のCFの役目を思い出したか。だがもうヘロヘロじゃねぇか、練習サボってるからそうなるんだ。
美しいサッカーが信条だったか?
はっ 結局は汚れ役じゃねーか。」

「…お前こそ守備ばっかじゃねーか。先制点だってキャプテンの個人技だ。トップ下のプライドはどうした?」


犬猿の仲である君下先輩と大柴先輩。
その2人がいざ互いの胸倉を掴んで殴り合わんとした時、「よせ、時間だ!」と言う監督の怒鳴り声が控え室に響いた。
ホッとしつつも皆で移動。
そして一触即発な犬猿の2人が…


「信条もプライドもあるか、1年が必死にやってんだ」

「この試合は無様でも何でも勝つ!!」

「「一時休戦だ。」」


10番と11番の背番号を背に、真っ先に会場へと向かった。

問題は前線の4人…
水樹キャプテン、大柴先輩、風間、君下先輩の気力と体力が後半どれだけ持つか、だ。





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