ユニフォームの汚れ

合同合宿2日目。
今日は他校との練習試合の日だ。


「大宮実業高校さんは、よく走るいいチームだ。
普段出番の少ない1年生にとっては貴重な実践の経験になるだろう。
泥臭くいけ、勝ちにこだわれ。」


水樹キャプテンの言う通り、1年生にはあまり試合に出る機会がない。と言っても、風間は例外だけど。風間は、監督が聖蹟に入ってくれとしつこくスカウトしたくらい、サッカーが上手らしい。
そんなわけで、今日の主なメンバーは風間を除いた1年生なのだ。ちなみに、相手は皆3年生。


「聖蹟ボールから始めます!!」

『……あ、今気付いたけど、柄本君ってばユニフォーム裏返しじゃん。』

「気付くの遅くね?」

『風間は気付いてたなら教えてあげなよ。』


聖蹟のシュートやパスの数を記録する私の隣には、カメラで試合を録画する風間がいる。ハハハって笑いながら撮ってるから、ちゃんと真面目に撮れているのかは疑わしい。


「スゲー楽しそうにやるよなぁ…つくし。」

『……どれどれ…あ、本当だ。めっちゃ笑顔。』


まだサッカーを始めて1ヶ月弱。そのため、シュートは勿論パスもまともにできていない。
故に、柄本君は1番たくさん走ってる。
ポジションなんか関係なしに、ただただ、ボールが行く所へ柄本君も走ってるのだ。そして聖蹟の皆もそれにつられている。


ピーーッ

『…おおっ、4対0で、聖蹟の勝利じゃん。』


試合終了の笛が鳴り響いた。
聖蹟側は、泥だらけになったユニフォームを身に包み、息を切らしている。
一方の大宮実業高校は、柄本君を見てヘラヘラと嗤っている。あげく、「すげぇ下手なのがいたから調子が出なかった」と口々に言っているではないか。


『…シバき倒してやろうか、あいつら。』

「いや…その必要はないんじゃない?」


止めたのは、意外にも風間だった。柄本君のこととなると、いの一番に熱くなる風間が…だ。
取り敢えず見守っているとー、


「まだンなこと言ってんのかよアンタら…
ホントはわかってんだろ?
アンタらはこいつに負けたんだよ。
オレたちの自慢の仲間にな…!」

「……っ!」

「わ……、わかってる…よ…」


来栖、新戸部、今帰仁などなど…賑やかな1年生メンバーに囲まれ、柄本君は守られた。
良かったねぇ、柄本君!
そしてよく言ってやったぞ、君達!
言われた大宮実業高校は、ぐうの音も出ないようで悔しそうに去っていった。ザマァ。


「てか咲ちゃん、見てみ? 両チームのユニフォームに、面白いほどに結果がそのまま出てる。」

『……う、うわぁ〜…今日の洗濯大変そう〜…』


そこかよ。って風間に突っ込まれたけど…
誰があのユニフォーム洗濯すると思ってんの?
マネージャーの私だからね。
でも、ユニフォームの汚れは、選手がちゃんと頑張った証なんだしね。私もアレをピカピカにするのを頑張ろう、よし!

近くで「お前のポジションはFWだろ!」「何でゴール前まで戻ってきてんだ」「修正大変なんだぞ」などとお仲間からのお叱りを受けている柄本君を見ながら、私はそう決意した。



(『庇われたり叱られたり…忙しいねぇ柄本君。』)
(「そして咲ちゃんは今夜洗濯に追われて忙しくなるのであった。」)
(『…そんな可哀想な私に同情し、風間も洗濯を手伝うのであった。』)
(「…と、思われたが、オレは今日ナッキーのサプライズバースデーを企画しなくちゃいけないので手伝えないのであった。」)
(『…え? ナッキーって…今帰仁くん?』)
(「うん。今日誕生日なんだぜ。」)
(『…今度何かあげよう。』)





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