優しさ=嘘
「す、好きです! 付き合って下さい!!」
『いやです。』
「即答!??」
今日、嫌々ながらも学校へと来た凛だったが…お世辞にも良い日とは言えない1日を迎えていた。
学校に来る道中、体操服を忘れて家に戻り…
だがしばらくして次は数学の宿題を忘れた為再び家に戻り…
そして二度あることは三度ある。
今度は家に鍵をかけて出るのを忘れた為、再び家への帰路をたどったのだ。
勿論そんな事をすれば学校には遅刻するわけで、朝から先生に説教をされる羽目になった。普通ならば、初めての遅刻だから厳重注意で済むかもしれないが…いかんせん、彼女のアノ態度が「お前反省してないだろ」と先生の火に油を注いでしまったのだ。
そんなこんなで(他にもまだあるのだが)…
良くない事が続いた本日の締め、要は放課後に、「果し状」と書かれた手紙が下駄箱に1通。
無視して余計面倒な事になったら嫌だと思った凛は、素直に呼び出された体育館裏へと来たのだが…
「ほ、他に好きな人でもいるの?」
『いない。』
「じゃあ、どうしてオレじゃダメなんだ?」
待っていたのは喧嘩ではなく、告白。
しかも学年問わず、学内で結構イケ面だと人気な男子からだ。
『……興味無いから。』
「興味無いって…オレに? それならその、そのうちオレのこと好きにさせてみせるから! だからオレの事今は好きじゃなくてもいいから、オレと付き合っ…」
『違う。
確かにあなたには興味無い。それは正しい。
でも私がもっと興味無いのは、恋とか愛とか…そういうの。』
普通の女の子なら告白されたら喜ぶだろう。
例え断るにしても、全然興味のなかった人に告白されたとしても、告白されて嫌な気分になる人は滅多にいない筈だ。
でも凛はこの〈滅多にいない〉部類の人間のようで、あからさまに嫌な顔をして答えている。
まぁ…彼女に告白している時点でこの男も少し変わっているかもしれないけれど。
「…彼女に告白する人間なんているんですね〜」
「…氷麗、それは失礼だよ。」
そしてそんな2人をコソコソと影で覗く者が2人…リクオと氷麗だ。ワクワクしながら見ている氷麗に対し、リクオは氷麗の発言に苦笑いしているが…顔に「確かに」とありありと書かれている。
そんな2人が覗き見してることを知らない凛は、珍しくも饒舌に話し続けた。
『友情なんて嫌い。愛情とかも嫌い。
皆…1人なのが寂しいから、愛される為に優しくしているだけ。
そしてその優しさは嘘。
嫌われないように、愛されるように、
自分をいくつか押し殺して嘘をついている。
それでもし傷つけられたら、傷付けた人の顔にモザイクかける。
それが…人間。私は、そんな醜い人間が嫌い。
…感情を持つ人間が、嫌い。』
だから私を好きと言うあなたのことも嫌い。
最後にそう言った凛は、それじゃ、と簡単に別れを済ませてその場を去った。
一方、
凛、そして彼女に告白した男子が去った後、リクオと氷麗は大きく息を吐いた。
「人間が嫌いって、彼女だって人間じゃないですか。ねぇ? リクオ様。」
「…………。」
氷麗の言うことも最もだ。
人間が嫌いって言うけれど、彼女こそ人間であろう。
なら、彼女は彼女自身のことさえも嫌っているのだろうか。
それとも、彼女は感情を消してしまったとでも言うのだろうか。
「…妖怪でさえ、人間が好きなやつがいるのにね。それにしても……」
優しさは嘘とはどういう事なのだろうか。
何故、そして一体何を、彼女は考えているのだろうか。
ぐるぐるとリクオの頭を占めるのは、先程の凛の言葉。
たかだか1週間、されど1週間。
初日以来、毎日お昼休みになると屋上で(約束もしてないのに)会うため、流れで一緒にお昼ご飯を食べるリクオ達。
先週だけで彼女について色々なことが分かったつもりだったが…
「やっぱり何を考えているのか分からない」とリクオは頭を抱え、
「やっぱりあの娘怪しいですね…」と氷麗は目を光らせるのであった。
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