見えるけど見えない

『いくら「いる」って信じてても…見えなきゃそこにいないのと一緒。』



放課後、清十字団に顔を出して帰ろうとすれば、君がいた。面倒くさいのか眠たいのか、ぼーっとした目で帰りたいと言う君が。

でも清継君の妖怪の存在を信じるかという問いに、君は眉を僅かに歪めたんだ。本当に僅かな差だから、それに皆が気付いたかどうかは怪しいけど。
そして、何を言ってるんだ、ではなく、何と答えようか、と考えるような表情にボクは変な違和感を感じた。でもその違和感は直ぐに、彼女の返答によって忘れちゃったんだけどね。

妖怪はいるよ

小さい頃のボクだったら、きっとそう返したに違いない。
見えなきゃいないのと同じ、だなんて…確かにその通りかもしれない。けれど、何だかボクや奴良組の存在を全否定されたような気がして、つい小さい頃のボクみたいに反論したくなった。



「……結局、彼女は信じてるのか信じてないのかどっちなんだい?」


パタンとドアが閉められた後、静けさが部活を包みこむ中…首を傾げなら言う清継くん。
ついで「結局信じてないんじゃね」という巻さんに、「ならば説得しないと!!」と清継くんが熱くなる。


「……ぁ、忘れ物してる! ボク急いで届けてくるから、氷麗はここで待ってて!!」

「えっ!? ちょ、リクオ様!?」


氷麗が後ろで何かを言っているが、それを無視して慌てて部室を去る。
まだ彼女が去ってからそんなに時間は経ってないはずだから…そこまで遠くまでは行ってないはず。


「……いた! 門井さーん!!
折りたたみ傘、忘れてるよ!!」

『!
…ホントだ、ありがとう…。』


折りたたみ傘を渡せば、ゴソゴソと鞄を漁り、それをしまう彼女。
そして抑揚のない声で『さよなら』と言う彼女に、ボクは気が付いたら問いかけていた。


「妖怪、見えるの?」


自分でも驚いた。
本当に、無意識のうちにそんなことを問いかけていたのだ。でも何故その質問をしたのかは直ぐに分かった。彼女の先程の返答で、「じゃあ君は見えるのか見えないのか、どちらなの?」と頭をよぎったからだ。


『……見えるけど、見えない。』

「…えっ!? 妖怪が見えるの!?
あれ、でも見えないって……どっち!?」


最初に聞こえた『見える』という言葉に、ボクは心の奥底で「やっぱり」と感じた。
『見えない』と言われても納得するけど、なんとなく『見える』と言われた方がしっくりくる。


『見える。
だけど目障りだから、見えないようにしてるだけ。』

「目障り……て、酷いな…」

『……君も見えるんだね。
……どうでもいいけど……。じゃあね。』

「え、あ、うん。また明日!」


ボクの言葉からそう判断したのか、それとも何らかの力で分かったのか…どっちなんだろう。
でもどうやらボクが妖怪の血を引き継いでることには気付いてないみたいだ。気付いてたら『君も見えるんだ』なんて言わないだろう。


「リクオ様〜! もうっ、置いていかないで下さいよ!!」

「わさわざ来たの!? このくらい1人で大丈夫なのに…。」

「いいえ! あの門井さんが怪しい者だったらどうするんですか!!」


……怪しい者だったら、というか最早氷麗の中で門井さんは怪しい者になってるだろ。明らかに警戒心丸出しだし。


「ごめんごめん。
あ、じゃあついでにグラウンドの草むしりでもして帰ろうかな!」

「今からですか!?」


別にいいですけど、と言いながらもボクの後ろをついてくる氷麗。道中、門井さんが妖怪を見ることができると伝えれば、やはり「あの女変です! 只者じゃありません!!」と氷麗は言う。
まぁ、確かに…少しというかだいぶ変な所があるけれど、でも……


「敵意は感じないんだよなぁ〜……」



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