だるまさん(鯉伴side)


『みんな、あそぼう!』
「いいですね! 何して遊びますか?」
「鬼ごっこだろ!!」
「鬼ごっこは駄目だ! 菜也様が転けたらどーするんだ!! 隠れんぼでどうだ!?」
「隠れんぼなんかして本当に神隠しにあったらどうすんだ!!」

ある昼下がり…
スタスタと廊下を歩いていれば、元気な声が聞こえてくる。その声が聞こえてくる庭に向かえば、孫の菜也と小妖怪達がいた。
どうやら何をして遊ぶかで揉めているらしい。

「じゃあ何して遊ぶのさ?」
「ダルマさんが転んだ…とか?」
『えぇーつまんないよー…』
「…じゃあ、ダルマさんを転がしてみた、はどうだい?」
『ダルマさんを転がしてみた? なぁに、それ!』

ヒョイと混ざってそう提案すれば、菜也はワクワクとした様子で聞いてくる。一方の小妖怪達は…オレがやらんとしていることを察したようで、セカセカとある準備をし始める。

「どんな遊びか知りたいかい?」
『うん! 知りたい!!』
「よし、じゃあオレに付いて来な!」

こくこくと頷く菜也を連れ、スタスタとある部屋へ向かう。道すがら色々な道具を持ってきた小妖怪と合流し、ようやく目的地へと着く。


『?
ここって誰のお部屋?』
「ここはな、だるまさんのお部屋だ。
ちょっと待っててな。」

コテンと首を傾げる菜也に待つように言い、小妖怪達に目で合図を送る。長年一緒に暮らしてきた小妖怪達だ…オレの言いたいことを瞬時に汲み取り、期待通りに動いてくれるのは言うまでもない。

「2代目、準備完了です!」
「こっちも準備いいですよー!」
「それじゃあ…いつでもどうぞ!」
「おーう、てめぇらよろしく頼むぜ?」

だるまさんの部屋の周りでスタンバイする小妖怪たち。

「菜也、もう少し遠く離れたところに行け。」
『もう少しって…どのくらい?』
「そうだな…あそこの木のところまで行ってくれないかい? んで、着いたら木魚達磨を大きな声で呼ぶんだ。いいな?」
『うん! 分かったー!!』

そう…ターゲットは木魚達磨だ。
笑顔で少し離れた木の所へ向かう菜也を尻目に、オレは明鏡止水で姿を消す。
そしてー

『木魚達磨さーん!!』

言った通りに大きな声で達磨を呼ぶ菜也。
すると、部屋の中からトタトタと歩く音が鳴り始める。

「どうかなさいましたか?」

ガラリと開かれた扉から出てくる達磨は、不思議そうな顔をしてそう問う。そして『ちょっとコッチに来てー!!』と笑顔で言う菜也の元へ、頬を弛ませながら歩み寄ろうとする…が、

「あらよっと。」
「むをぉっ!!?」

オレにすっと足を引っ掛けられ、ズデーンと勢いよく転ぶ達磨。直様立ち上がろうとする達磨だが…

「まだまだー!!」
「「必殺☆ローションかけ!!」」
「な、なにをするお前ら!?」

バケツに入ったローションを小妖怪にかけられ、ツルツルと滑ってなかなか立てないもよう。それどころか何度も滑り転けている。

「ふははははー無駄だぞ木魚達磨!」
「この廊下は昨日ワックスでつるピカになったばかり!」
「ローションをそんなに被ってちゃあ…そうカンタンには立てないぞ!」
「…まっ、そういうこった! わりぃな、木魚達磨。」
「お主らぁぁああ!!!!」

ケラケラとからかい笑うオレ達に、青筋をたてる木魚達磨だったが…

『あははっ 木魚達磨、赤ちゃんみたーい!!』
「ぅっ…菜也様…」

楽しそうに笑う菜也に、木魚達磨の怒りは鎮まる。
その代わりー


「…ねぇ、アンタ達。
昨日綺麗にした廊下が何でこんなベトベトになってるのか…私が納得するように簡潔に説明してくれるかしら…?」
『ママだ!』
「菜也ちゃん、ママね、今からおじいちゃん達とお話があるから…ちょーっとリクオかおばあちゃんのところに行っといてくれる?」
『はーい!!』


行かないでくれ菜也ちゃあぁぁぁぁぁん!!鯉菜の怒りを唯一鎮められる菜也がこの場からいなくなったところで…オレ達の死刑は確定した。
鯉菜のスゥッと息を吸う音に…オレ達は固唾を飲む。
ー来る…!!


「今すぐに片付けなさい!!
でないと…明鏡止水〈花ふぶき〉!!」
「ちょっ、片付ける時間くらいくれって!!」
「「「ひぃぃい!! 逃げろぉぉ〜!!」」」
「鯉菜様っ!
こんな事で技をお使いにならっ…、取り敢えず落ち着いて下され!!」


襲ってくる桜の花弁から逃げ惑うオレ達。
片付けたくても片付ける暇なくね? そんなことを思いながらも、取り敢えず鯉菜の怒りが落ち着くまで…なんとか自分達の命を守るオレ達だった。



(『? なんか今悲鳴がきこえたような…』)
(「ふふっ、気のせいよ! それよりケーキ作ったんだけど…食べない?」)
(『ほんと!? 食べる! おばあちゃんが作るケーキすっごく美味しいもん!!』)
(「あら、ありがとう♪」)

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