水樹's Birthday

「今日は何の日でしょう?」


放課後、いつも通りにマネージャーの仕事をしていたら声をかけられた。
振り替えるまでもない。この声は臼井先輩だ。


『水樹キャプテンの誕生日ですよね。』

「正解。流石は聖蹟マネージャーだね。」

『先々週から釘をさされてましたからね。』


2月11日は水樹の誕生日だよ。
そう幾度も言われれば、誰だって嫌でも覚えてしまうだろう。


『臼井先輩はもうあげたんですか?』

「あぁ。オレ達3年はもうプレゼントあげたよ。」

『皆何をあげたんで?』

「皆だいたい似たようなもんだな…グミとかラムネ、相撲カレンダーとか。」

『相撲カレンダー…』


水樹キャプテンの好物は確かグミだったはず。
嫌いなものは細く長いもの。
…細く長いものってなんだ、うどんか?


「早くやれよ、アイツ楽しみにしてるから。」

『…楽しみに?』

「毎年、自分の誕生日の時は皆にねだるんだよ。"今日はオレの誕生日だ"って。嬉しそうに。」

『あ〜想像つく〜…
てゆうか自己申告してくるんですねぇ〜…』


だからか。
さっきからグラウンドの方が騒がしいのは。水樹キャプテンが皆に自己申告してまわってるんだな。


『うーん…いつ渡そうかなぁー…』

「皆に紛れて今渡せば?」

『いや、それはハズイ…』

「何だ何だ〜?
お前らこそこそと何の話してるんだー!?」

『げっ 灰原先輩…
と、猪原先輩だ〜お疲れ様でーす☆』

「おう、お疲れ。」

「ちょっと待て。
オレと猪原に対する態度、違い過ぎね?」


先輩とワイワイ。プレゼントをいつ、どのように渡すかで騒いでいる私達。まるで…私が水樹キャプテンに恋しているみたいな感じ。全然そんなことないんだけどなぁ…。

勿論、水樹キャプテンの人柄は好きだけど。
恋愛的な愛ではない。


『うーん…』

「何をしてるんだ?」

『いや…水樹キャプテンにいつ渡そうかと…』

「オレ?」

『はい…て、ええっ!? 水樹キャプテン!?』

「うん。なに?」


いつからいたのやら…。
現れたのは水樹キャプテンで、今までの話を聞かれてたんじゃないかって焦ってしまう。でもニヤニヤ笑ってる灰原先輩と猪原先輩を見たら、スッと冷静になった。ありがとうバカ原二人。


『今日は何の日ですか?』

「オレの誕生日だ。」

『ふふっ…これ、誕生日プレゼントです。』

「くれるのか…? ありがとう!」


持っていた袋を水樹キャプテンへ。
待ってましたと言わんばかりに、水樹キャプテンは目の前で袋を開ける。恥ずかしいから家で開けて欲しかったけど…まぁ仕方がない。


「これは…サッカーボール?」

「…ん? 中に何か入ってるぞ。」

「…これ何だ? …グミ…?」

『グミ。サッカーボールのガチャポン、お菓子容器入れ。』


水樹キャプテンはじーっとそれを見つめてて…
ガチャガチャを回す。
すると、グミがいくつか出てきて、それを一気に口にいれた。…何か嬉しそうだな。


「美味しい」

『グミ好きですもんね。』

「サッカーボールの中からグミが出るのも面白い。ありがとう、咲。」

『…どういたしまして。
キャプテン、誕生日おめでとうございます!』


パチパチパチと拍手をして、皆でてんやわんやしていたら監督が来た。皆がちゃんと練習していないのを嗅ぎ付けて注意しに来たのだろう。


「お前ら早くちゃんと練習しろよー。
あ…それと水樹。
誕生日おめでとう、これやるよ。」

「ラムネだ。しゅわしゅわする。」

『(もう飲んでるし…)』


皆から色んなプレゼント(ほぼ食べ物)を貰ってホクホクな水樹キャプテン。
余程嬉しいのか…
ニコニコしながら練習していた。


「君下! ギュルルンってパスをくれ!」

「だからわかんねーよ!」


君下先輩のパスを経て、ボールはゴールに吸い込まれるようにして入る。それを決めた水樹キャプテンのシュートは、いつもより何倍も、勢いが良い気がした。





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