▽ 3番でファイナルアンサー!
ハローハロー、最近悪夢を毎日見て疲れている鯉菜だよ!え?疲れてないだろって?失敬な!朝起きた時の疲労感はもう半端ないんだからね!
『ふぁあ〜…』
「あ!おねーちゃん、また欠伸してるー!」
『…おねーちゃん、眠たい。一緒寝ようかリクオ。』
「えー!遊ぼうよー!」
リクオは元気だなー。元気なことは良いことだ。でもね、リクオ。そんな高速で揺さぶられたら私吐くよ?めっちゃ頭揺れてるからね?
…あ、今首がゴキュッって鳴った。痛い。
「おめぇ…吐くなよ?」
『いきなり現れて開口一番それですか。』
「大丈夫か?鯉菜」
『いや、もう遅いから。訂正効きませんから。』
「あ、首無だー!」
ホントだ。
向こうから哀れな首無がやって来る。今からリクオに遊ばれるであろう可哀相な首無だ。きっと容赦ないぞ。遊びたくて堪らないって目をしてたからね。首無を見つけた時の目は、玩具を見つけた時の目と同じだったからね。
…あっ、さっそくリクオに頭取られてる。
「ちょ!リクオ様!?
ってうわぁあぁああぁあ!!」
『どんまい首無。』
「アハハハハハハ!」
…鬼だ。首無の頭でドリブルしてるよ。何あの子コワイ。つーか爆笑してないで助けてやれよ、お父さん!
「ハハハッ!あー笑った笑った!」
『あの光景を見て笑い泣きするアンタもコワイ。』
「…あー、そういやぁ、最近どうなんだい?」
『? 何が?』
「夢だよ、夢。まだ悪い夢見続けてんのか?」
『あぁ、そのことか。』
ちなみに例の悪夢を見て吐いた日、二度寝して起きたら目の前に何故かお父さんがいた。寝る時には毛倡妓がそばにいてくれたのに、朝起きたらお父さんのイケメン顔がドアップで目に入ったよ。爆睡してたから、お父さんが入ったの全く気付かなかった。
『あれから毎日見てるよ。起きたら内容忘れちゃうんだけど。』
嘘です。普通に覚えてます。
「いったい何なのかね〜。
…昔みたいに一緒にまた寝るかい?」
『有り難くお断り致します。』
「…だよなぁ。」
お互い苦笑いしながら話す。リクオの殺人的寝相について。
『てかさ、そろそろ首無助けてあげれば?』
「…そうだな。おーい、リクオー!」
「なーにー?」
「よっと」
お父さんが呼べば、リクオは大人しく首無の頭を持ってこっちに駆け寄ってきた。可愛い。そしてリクオを抱き上げて父親顔をするお父さん、マジ萌え。
『首無…お疲れ様。』
「り…鯉菜様っ…ハァ…ハァ」
……コラ、誰だ今首無が息切れしてエロいとか考えたやつは!
『アタイだよ』
「何がですか…ゲホッ!」
取り敢えず落ち着け、首無。
てか本当リクオは容赦ないな…なんて思っていれば、お父さんから手招きされた。
「鯉菜、首無、ちょいとコッチ来てくれねぇか?」
首無を見れば、彼も私を不安そうな目で見ていた。どうやら考えてることは一緒らしい…リクオと一緒に何か仕掛けてるんじゃないか?
「別に罠も何もねぇよ。ただ話がしたいだけさ。」
それでも恐る恐るお父さんのところへ首無と向かえば、お父さんはゆっくりと口を開いた。
「首無 オレはこいつらに選ばせたいと思ってんのよ、人か…妖か。」
「二代目…」
『(あぁ、このシーンか。)』
「一度 妖怪任侠の世界に入っちまったらもう戻れねぇ。半妖のオレは妖を選んだが、こいつらには妖の血が4分の1しか流れてねぇ。こいつらの人生はこいつら自身が選ぶんだ…」
「しかし…もしものことがあったら!」
「首無ィ〜…お前さんはホントマジメだねぇ〜…。今日もあやとり教えたな?」
「う…」
漫画でも思ったけど、あやとりと真面目さって関係無くね?
「〈将軍様のお膝下〉でもねぇ〈帝都〉でもねぇ。〈東京〉になってまた闇は薄まった…まるでこいつらの血みてぇに。そうー こいつらが象徴なのさ、人と妖の未来のな…。だからこいつらの前ではあんまり妖の世界のことは語らずだ。」
いや、無理だろ。
本家に住んでるし、嫌でも耳に入るからね?
「“親父”にもキツくそう言っとけ。自分で気付いたのなら、そんとき見せてやりゃあいい。
な?リクオ、鯉菜。」
そう言って、お父さんはリクオの頭をわしゃわしゃと撫でた。リクオは何の話か分かってなさそうだけれど、楽しそうに笑っている。
でも、私は楽しくない。
『……ねぇ、お父さん。』
「? なんだい?」
『「親父にもキツくそう言っとけ」って言ったけど…何で自分で言わないの?こんなこと言いたくないけどさ、まるで…そのうち自分が居なくなるのを知ってるかの口ぶりじゃない。』
これは前世で漫画を読んでる時から思っていた。
まるで…自分が居なくなった時のことを考えた上で、後のことを頼んでるみたい。それが嫌で、睨むようにしてお父さんを問えば、少し驚いたような顔を見せた。
「…そ、そうですよ! 二代目。
どういうことなんですか!?」
「…鯉菜はホンット鋭いなぁ。」
首無はハッとしてお父さんにつめよるが、当の本人は苦笑いしながら頭を掻いている。
冷静に考えてみれば、少々"らしくない"話だってことが分かる。だって私たちの父親はぬらりひょんじゃなくて、奴良鯉伴だもの。父親である鯉伴が、何故父親のすべきことをぬらりひょんに頼む?
「…妖怪任侠の世界では、いつ何が起きるか分からねぇ。勿論オレは強ぇからそう簡単にやられはしねぇ。でもな、それでも万が一ってことはある。」
―首無、お前なら分かるだろ?
そう言いたげに、「だからよろしくな」と首無に言うお父さん。それでも首無は難しい顔をして黙る。
分かるけれど、理解したくもないことだ。
「…どうかしたの? みんな。」
しばらくして、(私のせいだけど)この何とも言えない気まずい空間に耐え切れなくなったのか…リクオが口を開いた。心配そうな顔してる…怖がらせてゴメンよ、リクオ!
「何でもねぇよ。それにしても、リクオは人と妖…どちらを選ぶのかねぇ。 鯉菜はどうだい?」
『…へ? 私?
そうねぇ…私は3番の人間と妖、両方かな!』
その答えに、お父さんと首無は何故かポカーンと口を開けてしまった。何故だ。これが理想の答えじゃなかったのか!?
『…言っとくけど、選択肢なんか作ればいくらでもあるんだからね!』
半ば自分に言い聞かせるように言う。
そうだ。お父さんを助ける方法だっていくらでもあるはずだ。
「お嬢ー!若ー!3時のおやつですよー!」
『あ、つららだ。』
「やったー!おねーちゃん、行こう!!」
『うん!』
おやつのお知らせで、難しい話は一気に消し飛んだ。だって私たちはまだ子供だもん、仕方ない仕方ない。私は大人だからおやつなんか興味ないけど、子供相応に喜ばないとね! 別におやつに目がくらんでるわけじゃないもんね!!
そんな言い訳を頭の中で言いつつも、全力疾走で向かう先は今日のおやつ!
今日のおやつはなんじゃらほい♪
(「両方選ぶとはな…鯉菜のやつァ、欲張りだねぇ」)
(「そう言う割には嬉しそうな顔をしていますよ」)
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