(…今日もいい天気………)


爽やかな朝。
真っ白な隊服に袖を通して、今日一日の予定を思い返す。


みょうじなまえは、見廻組に最近入隊したばかりの女隊士である。
彼女は凛々しく頼れる異三郎に憧れて入隊したのだが……

今となっては、それは過去の話。



「…そうだ、今日は午後から巡回の当番だった。誰と一緒なんだろ…「私と一緒です。大いに喜んで下さって結構ですよ」……ひゃっ!?」



音もなく背後から近付き、抱き着いて来たのは……憧れだったその人。

何故、過去形になってしまったかというと、入隊するまで知らなかったある真実を知ってしまったから。








……憧れた彼の実態は変態だったのだ。







「……局長、離れて下さい」

「どうもすみません。なまえさんの後ろ姿を見たら抱きしめたい衝動を抑えることが出来ず、つい……あ、シャンプーだけでなくボディーソープも変えたんですね。私の好きな香りです」

「っ……変態!早く離れて下さい!!それと、勝手に部屋へ入らないで下さい!!」



堂々としたセクハラに耐え切れず拳を振り上げれば、いとも簡単に受け止められてしまう。
それどころか、腕を掴まれ後ろ手に両手を束ねて拘束されてしまった。

背後から彼の吐息が耳元にかかり、ゾワリと体が震える。



「つれないですねぇ……私のことが好きで見廻組へ入隊したというのに…」

「ちっ…違います!私は貴方に憧れていただけで…っ!べ、べ、別に好きだなんて…!!」

「……まぁいいでしょう。それよりなまえさん、貴女は今の隊服に満足していますか?」

「はい?」



私の上司はまた突拍子もないことを…。


信女さんと違って周りの隊士達と変わらぬパンツスタイルである私だが、これといって不満は無い。


…………………ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、女性らしい隊服を着た信女さんを羨ましく思ったりもするけど。



「その様子では何やら不満があるようですね」

「べ、別に不満なんか……」

「素直になれないなまえさんに朗報です。貴女の新しい隊服を私が提案し、今日サンプルが届きました」

「私の……新しい隊服……?」

「えぇ、そうです。試着していただけますか?」



私の両手の拘束を解いた局長は、何やら紙袋を手渡してきた。
え、ほんとに?ちょっと……というか、かなり、嬉しい………かも。



「ふ、ふーん……別に、新しい隊服なんて必要なかったんですけど…局長がそこまで言うのなら着てあげなくもないですよ」

「……本当に素直じゃないですね」



呆れ顔な局長は無視して、早速紙袋から隊服を取り出す。
ウキウキと心を踊らせながら広げたそれを目にした瞬間、体中の細胞全てが凍り付いた気がした。




……何てったって試着を勧められた物が、
ワンピース型の隊服(ミニスカ)だったんですから。




「あの…私の新しい隊服は……?何かメイド服のような物が間違って入ってたんですけど…」

「そのメイド服のような物が、紛れもなく貴女の新しい隊服ですよ」

「っ………無理!こんなの着れません!!」

「まぁそう言わずに」



手に持った衣類を力一杯局長へと突き返せば、ガシリと両手を掴まれやんわり押し返される。

…強っ!チカラ強っ!!
何とも無い顔してるけど、全力で押してきたよこの人!!



「いいから着てみて下さい。スカート姿、とても可愛らしいと思いますよ」

「う……………」

「私は見たいです、貴女のスカート姿を。絶対に可愛いです…命に誓って断言出来ます」

「命って、小学生じゃないんですから………………じゃあ……ち、ちょっとだけなら…」






……べ…別に、可愛いって思われたい訳じゃないから!
局長がどうしてもって言うから仕方なく着るんだからね!!









―――
――








局長に一旦部屋から出てもらい、渡された隊服をまじまじと見る。
うーん……確かに可愛いんだけど、丈が短い気がする。

しかもスカート部分の内側にあらかじめパニエが付いていて、フワリと綺麗に開くようになっているもんだから………その……ちょっとした動きで下着が見えそうだ。


着るのを躊躇っていると、急かすように扉の向こうからノックの音が飛び込んでくる。



「なまえさん、あんまり遅いと私の目の前で着替えることになってしまいますよ」

「えぇ!?ちょっ……着ます!すぐに着ますから待ってて下さい!!」

「紙袋にニーハイも入ってますので、忘れずに履いて下さいよ」

「わ、わかりましたよ…」



局長の発言に冷や汗をかきながら慌てて着替え始める。
こういう時彼が発言することは、本当に実行されてしまうから困るのだ。


慣れないスカートに多少まごつきながらも、言われた通りご丁寧に用意されたニーハイソックスを最後に装着して姿見を覗き込む。



(こ、これは………!)



着てみると想像以上に丈が短く絶句する。
アイドルの衣装のようにフワフワなスカートは、一体膝上何十センチで作ったんだよあの変態局長め。


やっぱり脱ごう…と着たばかりの隊服に手を掛ければ、何の合図もなしに扉が開かれ再び絶句する。



「……脱ごうとしても無駄だお。
なまえさん、とても良くお似合いです。さながら天使のようです」

「っ……か、勝手に入って来ないでって何回言ったらわかるんですか…!そんな風に褒められたって、別に嬉しくなんかないです!!」

「そんな格好で怒鳴ってもツンデレが強調されるだけですよ。
……もしや私を煽っているんですか?上等です、こちらへ来なさい」

「何言って…煽ってなんかないです…!
も、近寄らないで下さ……ひゃあ!?」



にじり寄ってくる局長に半ば半泣き状態で後ずされば、先程自分が慌てて脱いだ衣類に足を取られて尻餅をついてしまった。

…それと同時にパサリと小さな音をたて、短いスカートが捲れる。



「へ……………」


「おや……………………ピンクですか」



しげしげと見つめられたのち、躊躇いなく放たれた言葉に全身がカッと熱くなる。

剥き出しになった自分の太股を見て更に赤面すると、急いでスカートの裾を両手で押さえて局長を睨みつけた。



「局長のバカぁ……変態…!早く出ていって下さい……っ」

「そのアングルもなかなか……やはりその丈にして良かったです。あ、明日は違うタイプの隊服が届くので、また試着をお願いします」

「もう普通の隊服で良いです…!!」





怒鳴り付けたところで、この変態な上司に効くはずもなく……(むしろ、どういう訳か喜ばせてしまった)

また明日もこのやり取りを繰り返すのかと想像し、私はげんなりとうなだれた。










(なまえさん、怒らないで下さい。貴女が可愛すぎてつい……)
(……そんなこと言われても騙されません)
(嘘などついていませんよ。貴女は可愛い…それ故、可愛らしい格好をもっとさせてあげたいと思っただけなのです。どうか明日届く隊服も試着していただけませんか…?)
(……………)
(……………)
(………局長がそこまで言うのなら、着てあげなくもないです……べ、別に可愛いって言ってもらえて嬉しかった訳じゃないですからね…!!)


((ツンデレ具合も程よく最高です、なまえさん))








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