「おはようございます。日下部くん、アーサーくん」
「おはようございます!鈴音さん!」
「今日もいい朝だな」
「こらアーサー!挨拶くらいちゃんとしろ!」
鈴音さんは笑顔を浮かべながら、俺達のいつものやり取りを見ていた。
「っと、すみません朝から」
「良いんですよ、2人とも元気ならそれで」
「はっはっは!流石この城の姫!懐が……ふところが…」
「深い、ですか?」
「そうだ!懐が深い!」
「アーサー…お前なぁ…」
俺が呆れていると、隣で小さくぷつん、と何かが切れる音がした。見てみるとアーサーの前髪を纏めていたゴムが切れた様だった。
「なんだこの脆弱物は……」
「あっ、ちょっと待って下さい、アーサーくん」
鈴音さんは咄嗟に制服のポケットからゴムと鋏を取り出した。適当な長さに切って輪を作る。
「はい。このくらいの長さで大丈夫でしょうか?」
「あ、あぁ…多分。かたじけない…」
「鈴音さんってほんと色々持ってますよね」
「第8の事務員ですから。何があっても…まあ戦闘以外にはなりますけど、対応できるようにしたいので」
俺と鈴音さんが話している間、受け取ったゴムで前髪を縛り直して、柄にもなく気恥ずかしそうにしてるアーサーが見れたのは正直少し、いや、かなり面白かった。
そしてその後アーサーの机の上にはカラフルなゴムが置かれていて周りを湧かせたのは言うまでもない。
変わらない朝が特別になるまで
(あら、アーサー可愛いの持ってたんですね)
(意外ですね、マキさん)
(意外ですね〜)
(ぐぬぬ……嬉しいことは嬉しいがこれは……)
(悪いことしてしまったかな…)
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