まるで病気のよう 『どこいんの?』 たった6文字を送信しポケットにねじ込む。部活前に顔を合わせるはずだったのに待ち合わせ場所にいなく、電話をかけても繋がらなかった。イラつきながらも結局、会わないまま部活に向かった。今は部活終了時間。最終下校時刻ギリギリ。携帯を見るが応答はなかった。 校内で偶然鉢合わせることは同じ学年にしては少ないと思う。しかし、彼女は返信は早かった。話し相手がいないから手持ち無沙汰なんだろうと勝手に決め込んでいる。その彼女が、数時間連絡が取れない。昼には確かに待ち合わせについてのやりとりを交わした。もしかして今日じゃなくて明日だと思ってるとか?疑問とイラつきが募る。 「でも返信がないっていうのが…」 「なにしてんだ黄瀬ェ、帰んぞー」 「あっ、はいっス!」 慌てて先輩らを追いかけ、歩くスピードを合わせる。 「なにしてたんだ?」 「いや、ちょっと連絡取れなくてなんだろって思ってただけっス」 「連絡?」 「妃ちゃんだろ?部活終わりにすぐ連絡なんて爆発しろ」 「先輩も作ったらいいじゃないスか。カノジョ」 「そう簡単にいくかってーの!」 「約束でもしてたのか?」 「へ?」 「なんでだろって思うってことは連絡つくはずだったんだろ?」 問う笠松にあー、と黄瀬はどう説明しようかと目を動かす。多分帰ったんだろう。いま黄瀬からの連絡に気付いても部活終わりで言及される。黄瀬が帰宅したであろう時間帯にようやく電話なりしてくるはずだ。 「いつもこの時間にかけたら電話繋がってたから珍しいなって思っただけっスよ。いいから帰りましょー」 「毎日かけてんのか」 「部活三昧で寂しい思いさせてますからね」 「爆発」 「どんだけ爆発させたいんスか!」 「……ちゃんと見ててやれよ」 「え」 「なんでもない」 行くぞ、と歩き出す笠松。さっきから妃のことになると笠松らしからぬ発言が出てくる。ような気がする。 前回ゴミを被った妃に出会してしまった。心配するな、黄瀬に話すなと釘をさされているがどう言われても笠松も見てしまった手前、心配せざる得ない。 そんな様子の笠松に黄瀬は今日はみんな変だと首を傾げた。 「んで、出ないんだよ…」 いくら連絡しても応答がない。もうすっかり夜だ。一体なにをしているんだ。昼までは普通に返事がきていたのに。繋がらない電話にイラつきが募る。 つーか、なんで俺がこんなに心配しなきゃいけないわけ。おかしいっしょ。約束破ってるのはあっちなのに。 やめやめ、と黄瀬は携帯を置き雑誌を手にベッドに寝転がった。知るかあんな女。明日問い詰めてやる。 「……………………ああああもう!」 乱暴に上着を羽織り携帯を片手に部屋を出る。向かう先は学校。いるわけない。分かっているが妃といい笠松の発言といい引っかかってじっとしてられない。神奈川の学校なんて今からダッシュしたって時間がかかる。なんでこんなことしてるんだほんとに。本当意味わかんねえ。 居ないって分かってるのに、いればいい見つかればいいと思う。いつの間にやられてたんだな、俺。 苦笑いを浮かべながら見慣れた電車に乗り込んだ。 |