おかしいです


朝のホームルームが始まる少し前。突然呼び出されたから何事かと思い慌てて体育館の傍の掃除ロッカーの前まで行く。朝練は終わったみたいだけど誰か残ってるかもしれないし。私マネージャーでもないし。
少しすると黄瀬くんがやってきた。

「先週練習試合だったんスよ」

挨拶もなにもなく急に話しだした黄瀬に「ああ、また女の子を振るの頼まれるのか」と納得する。もう慣れたものだ。

「んで、お昼はその学校の教室借りて食べたんスけど隣がその他校たちで。ちょーっと覗いらスモールフォワードのやつが彼女連れてきてて。お弁当持ってこさせてたんスよ!?試合前になに浮ついてんだって呆れてモノも言えなかったっスわ」
「そうなんだ」
「……」
「…ん?それでその子は黄瀬くんのファンだったの?」
「え…別に普通かな…」
「そうなんだ。じゃあ試合はどうだったの?」
「勝ったに決まってるじゃないスか」
「じゃあいいじゃない。言葉で批難しなくても試合で返したんなら」
「ハア?そうじゃないっしょ」

なに的外れなこと言ってるんだとばかりに溜息をつく黄瀬。妃は混乱する。女の子の話は出てきたけど黄瀬くんのファンでも五月蝿くされたわけでもなさそうだし、と。そのスモールフォワードの愚痴を言いたかっただけなのだろうか。それにしてもわざわざ呼び出してまで話す内容だろうか。自分と同じポジションだから頭にきたのだろうか。それにしても黄瀬くんがそれについて怒って良い立場とも思えないけど。
悩んでる妃に黄瀬は強い口調で言った。

「弁当作ってきてたの」
「うん」
「…」
「…」
「…」
「…え!私が作るの!?」

驚いて思わず大きい声を出してしまう。それに黄瀬は半目になる。え、頼まれてるの?すごく偉そうだけど。頼まれてるんじゃなくて命令されてる?
まあビンタ食らうよりは楽だけど。

「…料理得意そうだけど」
「え、なにそのイメージ。人並みだよ」
「レモン丸ごとはちみつに浸すレベルじゃなきゃ平気」
「なにそれ。さすがにそんな人いないでしょ」
「……」

黄瀬の反応がおかしいことに妃は気付かないまま続けた。「三日前くらいからこの日って言ってくれれば作ってくるよ。出来の期待はしないでほしいけど」と。
言うと一瞬黄瀬の顔が輝く。しかしすぐ我に返ったのかしかめっ面になり「じゃあ、よろしく」とだけ言って先に行ってしまった。
時間を確認すればもうすぐ鐘が鳴る頃だ。
最近黄瀬くんはなんかおかしい気がする。北校舎の一件以来、少しは心開いてくれたんだろうか。それともただの気まぐれだろうか。今日の黄瀬君の反応はころころ変わってたな。なんていうか…

「……ツンデレ?」



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