心臓を抉る


「あ、こんばんは」
「……ああ」

無表情に近い反応で生返事をする。正直困っていた。彼女とは高尾を通してしか話したことはなかった。高尾も、五月蝿い先輩もいない自分と彼女との一対一で出会うとは。自分でもコミュニケーション能力が高いとは思っていない。緑間は非常に困っていた。

「緑間くん、またテーピング買いに行くの?」
「使ってみたら良かったからな」

じゃあまた途中まで一緒だねと微笑う妃。やんわりと歩き出し、自然と一緒に歩く形になった。「今日は一人なんだね」と珍しそうに緑間を見る。秀徳に行ったことなんて数回しかないが、毎回高尾と緑間がセットだった。もうそういうイメージが妃の中でついていた。
誰、とは言わずとも言いたいことが分かったらしい。緑間もすぐに返す。

「今日は両親の帰りが遅いらしい。妹がいるからと練習が終わったらすぐ帰ったのだよ」
「え?そうなの?」

なんだ、言ってくれたら家行ったのにと呟く妃。当たり前のように言うところに仲がいいことが窺える。妃は気まずいとは感じてないらしい。いつもと同じテンションで話してくる。

「仲が良いな」
「そうだね。もう十数年一緒だし」
「なぜ秀徳に来なかったのだ?」
「へ?」

驚いた顔になる。急に自分のことを聞かれるとは思わなかったのか、無口な方である緑間から質問されるとは思わなかったからか。
聞いてしまってから、なぜこんなことを言いだしたのかと自分でも驚く。高尾がいるからといって秀徳に通うとは限らないだろう。交通の便から言えば妃にとって秀徳は一番近いだろうが学力や雰囲気、女子は制服で決めたりすると聞いたこともある。しかし、妃はうーんと考えまあ色々理由はあるけど、と苦笑いを浮かべた。そして予想外の答えを言った。

「和成がいるからかな」

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