遊園地に行こう〜10年後〜 朱音「いえーい遊園地!」 赤司「久々だね」 青峰「平日に予定合わせてもやっぱり混んでんな」 紫原「十年ぶりだねー」 赤司「おや?お前ら遊園地に来たというのに彼女も連れて来なかったのか?……ああ、そうか。悪い。不躾なことを言ってしまったな。気にしないでくれ」 青峰「ああ゛!?」 紫原「むっかつく。久しぶりにこのメンバーでって誘って来たの赤ちんじゃん」 黒子「以前は彼女のフリでしたからね。浮かれてるとしても人のこと馬鹿にしすぎですね」 黄瀬「まあまあ!入口で喧嘩しないで!迷惑っスよ!」 黒子「そうですよ」 青峰「お前はなんなんだよ!」 黒子「赤司くんと言い争う程馬鹿ではありません。早く並ばないと乗り物制覇できませんよ」 朱音「潔い…」 青峰「どうせテツ途中でバテるだろ」 黒子「そんなことないです。そんなことないです」 緑間「なぜ二回言った」 黄瀬「大事なことなので」 緑間「まったく。24歳にもなってこのメンバーで遊園地とは」 青峰「お前の恰好見てから言えよ!?なんだそのパーティー帽子!」 紫原「ラッキーアイテムまだやってるんだ」 朱音「奇跡的に場所とマッチしてる」 黒子「もし他の場所で集まることになっていたらと思うと恐ろしいですね」 黄瀬「渋谷原宿あたりならまだ……ううーん」 朱音「写真撮られてネットで話題になるだろうね」 朱音「あーもうすぐだ!今日はコーヒーカップ乗るって決めてたからノルマ達成!」 紫原「来といてなんだけどなんで予定合わせてまで遊園地なの?」 朱音「遊園地に行きたかったから」 紫原「だから赤ちんと朱音ちんで来ればよかったじゃん。ご飯だけとかならもっと早く全員の予定合わせられたのにさー」 緑間「……赤司は、遊園地は十年前に行った時以来なのだよ」 黄瀬「えっ」 青峰「なんでそんなに」 赤司「何度か遊園地に行こうかと話にはなったんだ。けど朱音が遊園地に行くなら黒子も一緒じゃなきゃヤダと言い出して……」 黄瀬「それで十年も!?」 緑間「壱原の黒子好きもここまでくると病気なのだよ」 朱音「パーティー帽子被ってる人に言われたくない!!!」 青峰「正直その通りだけどデートにテツは邪魔だろ」 朱音「…遊園地はみんなでわいわいしたいじゃん。征くんとは遊園地以外には色んなところデートしてるし。遊園地だけはみんなとのが楽しい!」 黄瀬「その理由でいうとみんなの中に名前が挙がってないオレ達の立ち場が」 紫原「黒ちんの名前だけ出すから行かせてくれなかったんだと思うよー」 朱音「えっ」 青峰「テツも知ってたんだろ?教えてやれば良かったじゃん」 黒子「ボクのところには何の情報も入ってきてませんよ。誘われたのは今日のが初めてです」 黄瀬「十年も赤司っちと朱音っちの間で攻防が繰り広げられてたんスか……」 朱音「ちょうど十年前にも行ったしあのメンバーとなら良いよってお許しが出た」 青峰「なげー」 赤司「昔はオレも余裕がなかったんだよ。今は大人になったからね。朱音への信頼や自分への余裕も出てきたんだ」 紫原「自慢気に言ってるけどさっき彼女連れてきてないのか云々言ってたの全然大人になってないかんね」 朱音「お化け屋敷」 黄瀬「懐かしいっスね。前にも入ったねー」 黒子「変わりないんでしょうか」 緑間「十年だぞ。大筋は変わってないだろうが所々変わっているはずなのだよ」 紫原「詳しいねミドちん」 緑間「壱原に酷い目にあわされたからな。抜かりはない」 赤司「朱音とふたりで入ったよね」 黒子「嫌がる朱音さんを無理矢理引っ張りこんでましたね」 黄瀬「せっかくだし行きたい!黒子っち入ろう!」 赤司「いいね。いこうか朱音」 朱音「あたし、一人で入りたい」 赤司「」 紫原「は」 黄瀬「えっ」 青峰「手を差し出した赤司になんつー…お前やっぱすげえや」 黒子「何を言い出すかと思えば。十年前怖いの大丈夫と言って入った結果ペアだった緑間くんに縋って脱出したのは誰ですか?」 朱音「今なら大丈夫な気がするの」 黄瀬「でも一人で入るって結構勇気いるっスよ?」 朱音「ひとりがいい!」 青峰「散々みんなとわいわいしたいって言ってたくせに」 紫原「昔からそういうとこあるよね朱音ちん」 緑間「今回は赤司も黒子も予想外だったようだが」 紫原「あーあ。赤ちん固まっちゃったよ」 赤司「……」 青峰「おい、コエーから早く赤司と入れよ」 朱音「青峰くん一人で入ってみたくない?」 青峰「いや全然」 朱音「ちょっと試してみたい」 赤司「朱音、どうしてそこまでこだわる?」 朱音「十年の違いを試す」 緑間「分かった。ならお前ひとりで行って来い。その間オレたちは他のに乗るのだよ。赤司は置いて行くから終わったら壱原はもう一度赤司と入る」 黒子「そうですね」 朱音「えーっみんな他の乗りに行くとかずるい!せめて黒子くんも置いてって」 青峰「お前も成長しろよ!」 朱音「だから成長して一人で入れるところを見せるんでしょうが!」 黄瀬「堂々巡り!!」 黒子「……いい加減にしてください。これだけの人数です。我儘はただの迷惑ですよ」 朱音「!」 黒子「どうしてそこまで赤司くんと遊園地に行きたくないんですか?」 黄瀬「赤司っちの前でそんなこと聞こうとする黒子っちすげー」 朱音「お化け屋敷は征くんと行きたくないんじゃないもん。本当に一人で入ってみたいんだもん……」 緑間「壱原も黒子の話は聞くようだな。青峰の説得は聞いてなかったが」 青峰「うるせー」 黒子「ならもう一度理由と一緒にお願いしてみてください。ちゃんとお願いすれば赤司くんも大人なんですから、分かってくれると思いますよ」 黄瀬「さっき言ってた”大人”ワード出してきた!」 緑間「黒子も甘いな………」 赤司「……まあ、理由次第ではオレだって自分が折れることもあるよ。可愛い恋人の我儘だ。聞こうじゃないか」 青峰「なにこの茶番。俺帰っていい?」 黄瀬「俺も帰りたくなってきたっス」 紫原「まーオレは前からふたりのフォロー側だったから別にいいけど」 朱音「申し上げます」 黄瀬「あ、そんな丁寧に言う感じなんだ」 緑間「益々茶番になってきたのだよ……」 朱音「前回はまだ彼女のフリを何の疑いもなくやっていた頃でした。あたしは何も考えてなかった。あれから十年。心が擦り減ったこともあった。嬉しさもあった。精神的に成長したと自負しております。あなたが好きだって気付いて、あなたと本物の恋人になって。幸せです。色々あってもこうしてまたみんなと遊園地に来れたこと本当に嬉しい」 青峰「え、なに。結婚スピーチ?」 黄瀬「赤司っち明らかに動揺してる」 紫原「でもめっちゃ嬉しそう」 朱音「色々なことがあったから、経験したから思うの。お化け屋敷は結局、人間が幽霊に扮して驚かせているもの。幽霊は信じてる方だけど、心霊スポットとお化け屋敷はまた別物。お化け屋敷なら一人で入れると思う。そう思ったの。みんなと来てるし、連れてきてくれたのに我儘言ってごめんなさい。征くんと入りたくないんじゃなくて、自分のメンタルを試したいの」 赤司「朱音…………」 朱音「今なら思う。本当に怖いのは幽霊じゃなくて人間。そして、人間の中でも怖いのは」 黒子「ンン”!」 青峰「朱音のやつ何言おうとしてんの!!?」 紫原「驚いてアイス落ちた」 緑間「ぞっとしたのだよ……」 黄瀬「朱音っちが言いたいことはみんな思ってるよ…?けど声に出しちゃ…面と向かって言っちゃダメっス!!あと黒子っちナイス!」 赤司「ごめん。最後聞こえなかったんだが」 朱音「征くんより怖いものはないってこと!!!」 青峰「あ、」 紫原「朱音ちん死んだー」 黒子「そろそろ閉園時間も近づいてきましたね。お土産見ますか?」 紫原「お菓子買いたいー」 青峰「既に食ってんだろ」 紫原「お家用」 黄瀬「えー?お土産もいいけど遊園地の締めといえばアレじゃないっスか?」 青峰「……野郎だけで観覧車とかありえねー」 黄瀬「フツーに楽しめるっスよ!」 紫原「お化け屋敷と観覧車にいきたがるとか黄瀬ちん女子ー」 黒子「ボクはいいですよ。景色見るのは好きです」 緑間「時間も迫っていることだし二手に分かれるのだよ。観覧車組と土産組」 黄瀬「よっしゃー!いこう黒子っち」 黒子「キミはお土産はいいんですか?」 黄瀬「実はちょっと前に来たばっかなんスよね。その時お土産たくさん買ったから」 紫原「って、誰と?」 黄瀬「え?」 青峰「はーーーー。相変わらず嫌味だよな」 黄瀬「えっ」 黒子「お土産見ましょう。青峰くん」 青峰「おー」 黄瀬「ちょっと―――!」 赤司「……」 朱音「……」 黒子「朱音さん」 朱音「……」 黒子「聞いてますか」 朱音「…ハイ」 黒子「キミ、実は観覧車乗りたいんじゃないですか?赤司くんと」 赤司(ピクッ) 朱音「く、黒子くん…!?」 黒子「変なところで照れますからねキミは。乗りたいと言えばいいのに恥ずかしがって。ボクと一緒なら言ってもらえると思って。ボクはキミたちの通訳じゃないんですよ」 朱音「えっと、ちが」 黒子「ボクは覚えてますよ。誠凛一年の夏、部活のみんなでここの遊園地に行った時。まだキミたちが拗れてた頃ですね。観覧車を見ながら”あの時乗っておけば良かったな”と」 朱音「ああああああああああああああああああああ!!!!それは確かに!確かに言ったあああ」 紫原「あ、崩れ落ちた」 赤司「朱音…」 朱音(ピクッ) 赤司「あの頃のことは本当にすまなかったと思っている。後戻り出来ずにバスケをしていたが朱音に対してはただの不誠実だ。さっきのオレが怖いって意見もその通りだろう。取り消せないし一生忘れちゃいけないことだと思っている」 朱音「征くん…」 赤司「それでもオレを選んでくれたことが本当に嬉しいよ。取り消せないけど、昔の朱音の我儘を叶えてあげたいんだ」 朱音「ひえっ」 赤司「さっきのことはお互い水に流そう。観覧車、実はオレも朱音と乗りたいなと思っていたよ。ずっと」 朱音「……ん」 黒子「はい。いってらっしゃい。ボクたちはお土産見てそのまま帰りますね」 青峰「なんか遊園地というより茶番を一日見せられたって感覚のが近い」 黒子「実際その通りですから」 黄瀬「朱音っちも可愛いっスね。赤司っちと観覧車乗りたくって結局十年かかったなんて」 青峰「あれを可愛いなんて言うのお前と赤司くれーだよ」 緑間「全く、壱原の照れ隠しのせいで巻き込まれたのだよ」 黒子「ああ。あれ嘘ですよ」 黄瀬「え?」 紫原「どういうこと?」 黒子「朱音さんが遊園地に行きたいけどボクがいないとヤダと駄々をこねたのは本当です。ただそれが赤司くんと観覧車に乗りたいから伝言役でというのは全くの嘘です。でっちあげです」 青峰「はあああ!?」 黒子「実際には逆です。観覧車とかあんな長い間赤司くんと密室だといたずらしてくるし何だかんだ許してしまう自分がいるから観覧車に乗る状況から避けたい。みんなとわいわい行けばそんなことも無いだろうから遊園地行こうと今まで散々誘われたものです」 黄瀬「あっやっぱ誘われてたんスね…」 紫原「最後朱音ちん許すどころか激照れだったもんね」 黒子「流石にあの空気のまま帰るのはふたりとも可哀想だと思ったので。そういうことにしておけば赤司くんも機嫌良くなるかなと」 黄瀬「たしかに会話振るのもためらうくらいの空気だったっスけど」 青峰「ただの嘘であんなこと言った赤司が不憫だ……」 緑間「だが壱原は崩れ落ちていたぞ?」 黒子「ああ、誠凛で行ったときああ言ってたのは本当なので」 黄瀬「……ふーん」 黒子「夏はまだ彼女も完全に立ち直れていない頃ですからね。その時に聞いたので印象に残ってたんです」 青峰「そーいやあいつそれは言ったー!とか言って崩れ落ちてたな」 黒子「途中で朱音さんもボクの意図に気付いたんですかね。否定しなくて良かったです。」 黄瀬「それ多分朱音っちの中で黒子っちのでっちあげには話を合わせるって染み付いてるだけだと思うよ?」 緑間「まあ、それなら赤司も壱原もお互い様ということで落ち着く…のか?」 黄瀬「一応はそうじゃないっスかね」 紫原「めんどいからそれでいーよ」 青峰「よしっ解散!俺は帰る!!!!」 |