こっちも仕掛けていきます


「最近仲いいな、あのふたり」
「何言ってんの峰ちん。元から仲いいじゃんー」
「そーだけど。なんか前より?」

良くなった気がする、とドリンクを飲みながら少し離れたところのふたりを見る。あんなにくっついてたろうか。いや、くっついてた気もするが。

「黒子くん体力もなければ握力もないね」
「なんです。喧嘩売ってるんですか」
「ボトルの蓋も明けられないようじゃ恰好つかないよ」
「喧嘩売ってるんですね」

やれやれといった動作をする朱音。隣に座る黒子は無表情で怒る。休憩時間とはいえ喧嘩ふっかけてくるとは呆れる。頭に乗せたタオルで垂れてきた汗を拭うとはあ、と息をこぼした。

「喧嘩っていうか、好きな子の持ってるペットボトルとかビンとかの蓋開けてあげるとか男の子憧れるんじゃないの?それ出来ないじゃん」
「漫画の読みすぎじゃないですか。文庫では蓋も開けられないような弱い人間が主人公なんて珍しくないですよ」
「出た!小説!あたしがあんななっがい活字読み切れるとでも?」
「まさか」
「…即答かい。あたしだって黒子くんがかったい蓋開けられるとは思ってませんからー」

言ってやったと満足そうにした朱音。もうすぐ休憩が終わる時間だ。時間を確認し立ち上がろうとすれば不意に腕をつかまれ引っ張られる。バランスを崩した朱音は黒子の支える手にしか便りがなく。

「え…なに、」
「支えてられますよ。あなたくらい」

耳元で囁かれびくりとする。言葉の内容と、声音に。ムキになっているのだろうか。黒子くんではないみたいだ。やられた!と赤くなる。

「それに今は、好きな子といえるかは曖昧なところですが彼女は朱音ですから」

あなたが開ければ問題ないです。

言って朱音を押し戻す黒子。言ってやった顔の黒子に朱音は顔が赤いことを自覚しながら思いっきり蹴りをいれた。



「あー、確かに。仲よさげ〜」
「だろ?なんとなく前よりくっついてる気がする」
「つーか、多分黒ちんからくっついていくようになったって感じ」
「テツ?」

紫原はちらっと後輩に指示を出している赤司を見る。
あ。いま見た。ふたりを見てる。嫉妬してるのかなにも感じてないのかは分かんないけど。

「わざと朱音ちんと『くっついて』どうなるか。オレも応援しよー」
「ハア?意味が分かんねえんだけど」
「だから峰ちんバカなんだよ」


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