それでいい 「で、これが付き合ってると言っていいんですかい黒子くん」 「なにか不満ですか?」 「いーえ。彼女のフリっていっても何もない本当にただのフリって分かるから了承したんだけど」 「はい」 「あたしと黒子くんってさ、元から仲良いじゃん。いつもと変わらなくない?」 あの後どこかに寄るかという話になったが二人のムードも会話も、何一つ今までと変わったところがない。マジバでシェイクを買い、ゲームセンターで黒子くんがUFOキャッチャーをするというよくある流れ。 「そうですか?」と淡々と聞き返す黒子。まあ、あからさまに変わられても困るけど。そしたら取り消ししてるけど。 「はい、ブタイタチ人形です」 「え…いらない」 「さっきからいらないいらないって、ぬいぐるみが欲しいって言ったの朱音さんじゃないですか」 「黒子くんなんでそんな変なのばっかりゲットするの!?」 「じゃあどれが欲しいんです?」 「んー、あっちのやつ」 「時計じゃないですか。ぬいぐるみどこ行ったんですか」 ちぇ、といじけてみせると演技しないでくださいと低く言われる。 そしてまた100円を投下する黒子にまだやるのかと呆れる。視線はずっとガラスの内側にある景品。UFOキャッチャーのセンスがない朱音はもう無駄なお金は使わないと決めたためやろうとは思わない。隣でじっと見てるだけだ。 「少しは落ち着きましたか?」 「え?」 いつの間にか黒子くんは朱音に顔を向けていた。少し間が空いてから励ましてくれたのだと気付く。…どっからだ。 「どうぞ。取れました、時計」 「…ありがとう」 「どういたしまして」 |