灯台下暗しと言うけれど 「…会えない」 あれから暇があればちょくちょく他のクラスを覗いてるようにしてるけど彼は見つからず。え、なんでいないの?と疑問に思う。 意外と影薄い?あんなに目立つ赤毛なのに。ぐてーと机に顔を置く。ちらりと隣の席の人を盗み見た。この人みたいに影薄かったら席に座ってても気付かないなーなんて馬鹿げたことを思う。 じっと見ていると視線に気付いた彼があたしを見た。 「…今失礼なことを考えましたね?」 「え、そんなことないよ黒子くん。気のせい」 「じゃあなにを考えてたんですか」 「うーん、宇宙はどのくらい広いんだろうとか?」 「僕に聞かないでください」 同じクラスの黒子テツヤくん。あたしの隣の席であり中学初めての友達だ。寡黙であんまり話さないけどその静かな空気を気に入ってるから嫌じゃない。 黒子くんは読んでいた文庫本を閉じ本格的にあたしと話す体制になる。それを見てあたしも机から起き上がりきちんと姿勢を正した。 「会えないって、誰か探してるんですか?」 「…聞いてたの?」 「耳に入ってきたんです」 隣なんだし、聞こえても不思議じゃないか。 別に隠してるわけでもないから黒子くんに話してみた。 「赤司征十郎っていう…あ、入学式のとき生徒代表だった人がそうなんだけど覚えてる?」 「赤司くんなら知ってますよ」 「…え、ほんとに!?」 「はい。バスケ部です。軍は違いますけど」 「バスケ…ああ、そっか…」 その言葉に納得する。バスケか、そっか。どうして休み時間ばっか気にしてたんだろう。放課後の方が見つけやすいことに今になって気付く。バスケ部とすると、彼は放課後体育館にいるのか。 「赤司くんと幼馴染だったんですね」 「うん。ていっても転校して中学で戻ってきたから全然会ってなかったんだけどね」 「なんか意外でした」 「そ、そう?」 「壱原さん、今日部活見に来ますか?」 「え…い、いい」 「来ないんですか?休み時間抜けてた時は探しに行ってたんでしょう?」 「急に会えると思ったら会いたくなくなってきた。だって…あたしのこと覚えてなかったら、寂しいし」 「今更そんな心配ですか」 鋭いツッコミが入る。長い間会えなかった分久しぶりに会うとするとなにを話せばいいのか分からない。そもそもこっちに帰ってることすら知らないはずだ。 本当に忘れられてたらどうしようって思ったりもする。小学校四年なんて少しだけ前のことだ。流石に目立つ方でもないあたしでも記憶に残ってるだろうことは分かってるけど。 「とにかく、心の準備が出来てから!まだ駄目なのー!」 「…はいはい」 嫌々と首を横に振る朱音に黒子はさっきの文庫本を開き呆れた様子もなく眈々と言った。 「まだまだ会えなそうですね」 全く、余計なお世話だ。 |