論述せよ


別れた男が新しい女を職場に連れてきたがその職場は元カノが働いています。その場に居合わせた仕事仲間の心境を答えよ。

「てな状態?」
「青峰くん、魂捻じり取ってあげますよ?」
「ンだよ、それ」
「そのままの意味です。綺麗に葬ってみせます」
「おいテツ!!」
「青峰うざい死ね」
「おーこわっ」

腕をさすり過剰に反応する青峰にイラッとする。この前まで心配してくれてたんじゃないのか。部活に顔を出したから元気になったと思ったのかいつも通りの減らず口だ。黒子くんは練習時以外出来るだけあたしにくっついてくれている。多分、気を使ってくれてる。でもここに一人でいるのは流石に辛い。とっても助かる。流石黒子くん。あたしの親友だ。
それに分かっている。イラッっとするのは青峰だけが原因じゃない。ベンチの隅で一人はしゃいでいる赤司くんの「彼女」さまのせいだ。

「征十郎くんお疲れ!」
「ああ、ありがとう」
「…やっぱり恰好良い!いつも恰好いいけどバスケしてる征十郎くんも好き!」
「そう?」
「うん!あ、今度お弁当作ろうと思うんだけど…私よくお菓子とか作るし、そこまで酷い味にはならないと思うんだ」
「ありがとう。助かるよ」

嫉妬とはこういうことなんだろうか。モヤモヤする。こっちを見て欲しいのに見たくないような。暇なのか隣でべしべしと背中をたたく青峰を今すぐ蹴り飛ばしたい。ちらと青峰を見れば目が合う。へらへらしていた青峰が急に顔色を変え目線をそらした。

「え、そんな怖い顔してた?」
「お前赤司とままごとやめてから凶暴になってねえか?」
「はぁ…そのままごとって言うのやめてったら」

今日久しぶりに部活に顔を出したが黒子くんが言うには彼女さんは頻繁に部活に顔を出しているらしい。まぁ、付き合いたてで四六時中一緒にいる(というか付いて回っているに近い)らしいから他の部員も何も言わない。そもそも少し前まであたしが「彼女」だったのだ。最初の頃は少しあった気もするがほとんど言われなかった。もちろんあの子にも言われないだろう。

朱音がちらちら見ていることは目の良い赤司なら当然視界に入っているだろう。しかし赤司は朱音を見ようとしない。まるで気付いていないかのように振る舞っている。彼女の方ももちろん朱音のことなど気にも止めていない。二人だけの世界という空気だ。しかし黒子は赤司が朱音のことを無視し続けているのが理解出来ない。少し前まで分かりやすいくらいの溺愛ぶりだった。みんなでふざけて騒いでいただけでも不機嫌になることもあった。なのに、あそこまで朱音を無視する理由は何なのだろうか。

「あっ、本当に来てる!朱音っち!!」

嬉しそうな声をあげて朱音に駆け寄る黄瀬。朱音が久しぶりと返せば笑顔を輝かせた。モデルのときの笑顔ではない。締まりのない表情に朱音の隣にいた青峰は「うえ」と声をあげた。

「マネ続けてくれるんスか?」
「うん。そのつもり。っていってもあたしがする仕事なんてそんなになかったけど」
「そんなことないッス。いてくれるだけで十分!女の子いるのといないのじゃ天地の差が…」
「女子ならさつきちゃんがいるじゃない」
「さつきに女子力を求めちゃだめだ」
「…あたしに求められても」
「そりゃそうだぐはっ」
「あ、ごめーん峰ちん。なんか思わず」
「ボディーガード健在ですね」
「別に直接手出してないだろうが!!」


「…壱原さんって黄瀬くんとも仲いいんだ」
「そうみたいだね。同じ部だと嫌でも顔を合わせるだろうし」
「ふぅん」
「羨ましいの」
「え!違うよそんなんじゃなっ」

慌てて赤司に向き直った彼女にちゅ、と唇を合わせる。一瞬で離れたそれ。しかし、その場にいた全員がそれを見ていた。凍り付く、とはまた別だろうか。
彼女のことを「付き纏われるのは迷惑」などと言って朱音に彼女のフリをさせた赤司がその彼女にキスをした。けれど朱音は目の前で起きた光景に怒りたいと微塵も思わなかった。

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