go from bad to worse


「そうですか、言ったんですね」
「それで、征くんは…新しい彼女を作ればいいだけだって、出てった」

そう言えば目を見開く黒子くん。なぜか居たたまれなくなって目線を下ろす。きっと赤司っちがおかしいと言っていた黄瀬以外にも赤司が変だと感じている人は多いだろう。だからこそ黒子も朱音に尋ねた。この状況は、あたしが作り出したものだ。部活にも支障が出ているなら、申し訳なく思う。

「ごめんね、こんなこと…」
「朱音さんは言いたいことを全て言えましたか」
「え?」
「僕が言えと言ったことではなく、朱音さんの考えをぶつけられましたか?」
「う、うん」
「それなら朱音さんは悪くないですよ。これは赤司くんの問題です。きっと今は混乱してるんだと思います」

今度は赤司くんが悩んで、答えを出す番ですから、と微笑まれほっとする。黒子くんのこの表情を見ると安心する。きっと大丈夫だ。征くんがどんな答えを出すのか全く想像がつかないけど、しばらくしたら友達同士に戻れて、今まで通り楽しくバスケ部で会えるはずだ。
今日は休んじゃったけどもうサボるわけにはいかない。病気や家の事情ならともかく人間関係でサボるのは嫌だ。
黒子くんに言えて元気が出たからかこれも言える気がした。こんだけ彼女のフリをしていたのにようやく気付いたことだ。我ながら呆れる。まず親友に、どうしても伝えたかった。

「あのね、黒子くん。あたし…赤司くんが好きだ」
「……そ、れは、どういう」
「彼女になりたいって意味で」
「っ、やっとですか。馬鹿な子ですね」
「あの人の告白は断る。元々知らない人だし」

なんだ、進展してるじゃないですか。赤司の様子や朱音の話を聞いて焦燥感があったが朱音が自覚したなら、本当の彼女になればいいだけだ。結果的にその名無し男子くんは良い働きをしてくれたと誰か分からないおかげでそんなことを考える。「赤司くん」という呼び名は、幼馴染でも彼女のフリでもなく、きちんと友達から進展したいという彼女の思いだろうか。そう思うと自然と笑みがこぼれた。
そのとき、ザワザワと周りがざわついた。何かと周りを見れば生徒たちの視線は自分たち、いや、朱音に向けられている。それともう半分は、校門の方。
嫌な予感はした。朱音に向けられた視線は決して良いものとは感じられなかったからだ。校門を見ればそこには赤司くんが立っていた。それと、まるでアピールするように彼の腕を取る女子生徒の姿があった。赤司くんもその彼女の行動について咎めず、話し込んでいた。部活バッグを下げた赤司くん。彼女を見送っているのだろうか。

「なっ…」

朱音さんも気付いたらしい。口元をおさえ、信じられないという目で彼らを見ている。焦燥感がまた訪れる。赤司くんが言っていたという「新しい彼女を作ればいいだけだ」。まさか。そんな。

「赤司くん、本当に新しい彼女を…?でもなんであの子…」

声が出せない。なにを言うべきか分からなかった。そんな余裕は僕にもなかった。状況理解で精いっぱいだ。なにを考えてるんですか。朱音さんは、やっと…

「あの子…いちばん最初に付き合ってるフリして追い払った子の、一人」

本当に、なにをやっているんですか赤司くん。

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