貼り付けの記憶


「せいくん!けっこんしよう!」
「…」
「…ねえ、せいくん!」
「朱音、けっこんってことば、きょうおぼえたでしょ」
「そーだよ。わたし、せいくんとけっこんしたい」
「……いいよ」
「ほんと!やったー!せいくん、ぜったいけっこんしようね」


今思えばこれが全ての元凶だったかもしれない。覚えたての言葉を使いたがって幼馴染の征くんとそんな会話をした。
といっても、小さい頃のそんな約束なんてどうやっても思い出として扱われる。お互いそんなの分かってる。小学校に入ってからは段々と家に遊びに行くことも少なくなった。
そして小学校四年であたしは親の転勤で地元から離れた。もう完全に連絡しなくなりアルバムを見てそういえば昔一緒に遊んだな、なんて思い出す程度。中学になるのと同時に地元に戻って来ても、小四のときからあまり話さなくなってたから特に連絡しなかった。
というか忘れてたって言えるかもしれない。

だから、学校で彼を見たときは驚いた。


「新入生代表、赤司征十郎」
「はい」

聞き覚えのある名前と見覚えのある赤髪。この辺に住んでるあんな髪色の男の子は二人といないだろう。つまり、彼だ。

「…征くん」

壇上にあがった彼を見つめ、昔呼んでいた彼の名前を呟いた。
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