図書室はお静かに


「朱音、朱音」
「−−−ん、……あれ、征十郎?」

目を擦りながら目の前にいる相手を確認する。放課後の学校の図書室。携帯を片手にいじってたのだがいつの間にか机に突っ伏して寝てしまったらしい。どうやらあたしと征十郎だけのようだ。
どうして征十郎がここに?と寝ぼけた思考で疑問に思う。征十郎は読書しているところは良く見るが「誰が触っているか分からない本を読みたくない」と図書室は利用していないはずだ。
すると征十郎から全く同じ質問を返された。

「こんなところで何をしてるんだ」
「え、っと…黒子くんの委員会が終わるの待ってたんだけど」
「黒子の?」

言った途端目つきが険しくなる。途端あたしは座ったまま姿勢を正した。そこは幼馴染であり、彼女(フリ)である。征十郎の機嫌が悪くなる空気が読めてしまう。
私の隣に立つ征十郎はじっとあたしを見下ろして喋らない。あたしはなにか地雷を踏んだのでしょうか。でもその地雷ワードが分からない。あ、征十郎も黒子くん探してここに来たとか?んで来て見たら朱音だけかよチッみたいな?それとも部活に出ずこんなとこで寝てたことに怒ってます?

「あの、征十郎?」
「…」
「ごめん寝ちゃってて。早く戻ろう」

椅子を引き立ち上がろうとすると突然肩に手を乗せ戻される。え、なに。驚いていると征十郎の顔が近付いて来てそのまま口を塞がれる。
なんですかこの状況!?
慌てて引き剥がそうとするが舌を這われ力が抜ける。やっと離されたときには呼吸をするのに必死で色々ツッコみたいことがあったのに出来なかった。

「征くん…」
「静かにしていろ」
「は、はい!」
「だから、うるさい」
「……すみません」

強めた口調で「うるさい」と言われればなにも言えなくなる。この状況はなんだろうか。キスされるのは初めてじゃない。二回目でもない。だからって決して慣れてるわけじゃない。征十郎みたいな美形な人に顔を近付けられるとかあたしからすれば容量オーバーなのである。精一杯頑張ってるよ!あたし!!
征十郎がキスするときは誰かに見せびらかしているときだ。図書室にはあたしたちだけ。ついさっき、委員の人がどこかから帰ってきたとかそういうことだろうか。

「廊下に誰かいたの?」
「…………ああ」

少し間があって頷く征十郎。だからって急にしてくるのはいかがなものだろう。ていうか委員の人だった場合居た堪れなくなって図書室戻れないんじゃないの?可哀想に…

「…黒子になんの用なんだ?」
「読みたい本が貸し出し中で今日返却日だから待ってたんだけどさ。延滞みたいだね」そう言えば「へえ、」となんだか機嫌が戻ったような声を出した。

「あ、そろそろ部室行く?こんな時間だし黒子くんももう来ないみたいだし」
「まだいよう。人のいない図書室なんて珍しい」
「え?その認識間違ってるよ!征十郎来ないから知らないだけ…んっ…」

隣にいる征十郎を見ようとすれば顎を掴まれまた口付け。急にこられると構えてない分しんどい!

「……うるさい」
「だからって…キスすることない!じゃん!」

そう抗議しても聞く耳を持たない。そりゃそうですよ逆は有りえてもあたしの言葉に征十郎が従うはずない。こんちくしょう!

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