最初に言っとくね ようやく休憩になって用意されたドリンクを無我夢中で飲む。こんなに夢中になったのは初めてだ。辛いけど楽しい。悔しいけど嬉しい。 端で座りながらぐたりとしていると近くに朱音ちゃんが来た。ドリンクの補充をするのかと思ったら俺の隣に座った。息を調えながら朱音ちゃんを見る。 「頑張ってるね。黄瀬くん」 「ああ…そう?」 「よく女子たち見に来てるよ。流石だね」 「…嬉しいっスけど、朱音ちゃんはどう思うっスか?」 「え?うーん、一年の頃も何人か見てる子いたんだよね。でも征十郎が迷惑そうにしてて。あたしいつの間にかマネージャーしてるし」 「え、いや、そうじゃなくて」 「え?」 わざわざ話しかけてくるんだから好かれてるのかと思ったのに、そういう空気にならないのはなんでだろう。女子が少ないこの場でちょっかいを出せるのは二人だけだっていうのに。 「(桃っちは黒子好きみたいだし…なんであいつがモテるのか分かんないけど)」 「黄瀬くんは黒子くんのことどう思う?」 「え、」 まるで思ってることが伝わってるかってくらいのタイミングにちょっと焦る。黒子のことをどう思うか? 「…そうっスね、なんで他のレギュラー達から認められてるか分からないっス」 「そう」 「体力も技術も、もう俺のがあると思う」 「ふーん」 「これ以上やっても上達しなそうっスよね」 「んー」 バスケットゴールを見ながら相槌を打つ。少し間があってから朱音ちゃんはにこりとして振り向いた。 「ま、黒子くんはしょうがない。そのうち分かるよ。でも」 次の瞬間、ガツンと顎を下からパンチされた。思いっきりではない。かすった程度で拳が止められた。 「黒子くんはあたしの親友だから、馬鹿にしたら許さないよ」 じっと俺を見つめる朱音ちゃんの目がさっきまでとは違った。初めて女の子で怖いと思った。じゃあ、と行って立ち上がり帰って行く彼女。 えええ、まじか。殴られるとか初めてなんだけど。つーか、好かれてるどころか睨まれたし。黒子モテすぎじゃね? 呆気に取られつつ俺は彼女の背を見送った。 |