とりあえず笑え!


「ねえ」
「…あ、バスケ部の。えっと」
「紫原敦」

呼び止められ振り返れば一度見たら忘れないだろう長身の男子がいた。彼はこの前体育館で見た。紫原敦というらしい。征十郎や黒子くんとは違い顔をあげないと目が合わない。おおきい…!

「きみが朱音?」
「…はい」
「じゃあ赤ちんの彼女って君なんだ」
「ほら言ったろ?体育館で話してたもんな」
「…俺だって予想してたよ」

横から話に入ったきた色黒の男子。この人も前にいた人だ。二人並ばれると更に圧倒される。

「い、いえ!彼女じゃないです!」
「違うの?」
「朱音…バラしたら意味がないだろう」
「……ああ!」

聞いていたらしい征十郎が呆れた目を向けてやって来る。そっか、彼女のフリなら否定しちゃいけないのか。
紫原くんと並ぶ征十郎。身長の差があるのに征十郎が上司で紫原くんが部下に見える。そこは征十郎、流石だ。

「どういうこと?」
「朱音は俺の彼女のフリをしてもらっている」
「「フリ!?」」

ハモった声。それと同時に角から出てくる二人。確か、青峰くんと緑間くんだ。征十郎とあたしを囲むようにして立つ。威圧感ハンパねえ…!
征十郎を見れば飄々とした表情だった。寧ろ「こうやって集団で聞かれることもあるからいつでも油断しちゃ駄目だ」と注意される。

「最近なにかと面倒だから代役を立てた」
「ああ…そういえばあの女子たちはよく見かけるのだよ」
「じゃあフリなんだ」
「ああ。毎回ではないが部活にも来させるから仲良くしてやってくれ」
「つーか赤司、お前そんなこと言いつつ本当の彼女にさせる気ぐあっ」

ニヤついて話す青峰くんの腹に鉄拳が入る。お腹をおさえる青峰くんにあたしを含め他のメンバーは黙ってしまう。初対面に近いのに緑間くんと紫原くんと意思疎通が出来た。恐ろしい…!

「ということだ。くれぐれも誰かに漏らすなよ」

何事もなかったかのように青峰くんをほっぽりあたしの腕を掴んで彼らから離れて行く。
… …あんなにでかい人たちでも征十郎に叶わないんならあたしはもっと無理だ。改めて思った。
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