蔑視的彼女

「で、なんで見に来てるんだ?」
「笠松先輩がそんなに言うなら行くしかないじゃないじゃないっスか」

黄瀬が行かないなら一人で様子を見に行こうと足を運べば黄瀬が着いてくる。言ってることさっきと違くないか?と思うが「見るだけだからいいんス」と返ってきた。なんだその屁理屈は。

「ていうか笠松先輩、女の子の話いつもしないのに名前のことはよく言いますよねー。…もしかして」
「だから!違うっつってるだろ!」
「しーっ、聞こえちゃいますって。冗談っスよ。あ、でももし本当に名前のこと本気なら先輩でも容赦しませんよ」

呼びに行ったのは自分だがからかわれてしかも牽制までされるこの状況に複雑な気分になる。振り向き黄瀬を睨めばなにが楽しいのかにこにこしていた。

「あ、あれそうっスかね」
「…本当にいいのか?ファンが彼女に嫌がらせされてんだぞ」
「嫌に決まってるじゃないスか。ああいうファンは許せない」

だから名前に任せるんスよ。
黄瀬は笑って言った。


「黄瀬くんのために別れてくれないかな」
「どうして?」
「黄瀬くんはモデルも部活もあって忙しいの。それなのにあんたもいたらストレス溜まっちゃう」
「試合負けたのに笑ってたよね?なに考えてんの」
「黄瀬くんの面子も考えてよ。迷惑だって、分かるよね?」
「…」

名前さんたちを見つけ側でこっそり眺める。背は校舎の壁、前に女子生徒の典型的なパターン。追いつめてるのは五人らしい。言葉攻めにあい、名前さんは黙ってる。

「黄瀬くんが好きなら、別れて」

言った直後、名前さんは口を開いた。

「えっと、それだけ?」
「え、」
「とりあえずみんなは私と涼太に別れて欲しいって言ってるんだよね。でもそれって涼太のため?涼太の面子とか言うなら私がふったらそれこそ駄目なんじゃない?涼太に言いなよ。まあ涼太が私をふるなんて有り得ないけど」

穏やかな表情のまま早口で続けている。それには俺だけじゃなく女子たちも急に口を開いた名前さんに驚いてるようだった。
そうだああいう人だったと安堵する。黄瀬を見れば「名前かっこいい!」と目を輝かせていた。呆れた奴だ。ここは引くところじゃないのか。フィルターってやつなのか。

「バスケで忙しいって言うけど、涼太はこの前初めて試合に負けてやっとみんなで勝つ大切さを感じ始めたの。それを喜んでたんだよね。勝ち続けることも嬉しいけどさ。…ていうか、あんたたちにバスケどうのこうの言われたくないんだけど」

女子たちを睨む名前さん。最後の言葉が低かった。やっぱりバスケ>黄瀬だ。

「涼太が好きならこういうことしないで」

たじろいた女子たちに名前さんはにっこり笑った。

「常識ないファンがいると迷惑だって、分かるよね?」
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