確信的彼氏

「おい、コート準備するぞ」

ホームルームが終わり途中であった後輩と体育館へ向かう。体育館の脇にはいつものようにしゃべりながら黄瀬を待つ数人の女子生徒。いつもより少ない。だからどうというわけじゃないが。
女子たちはこっちに気付くが黄瀬がいないと分かればすぐに目線は逸れ話に戻った。いつも通りにそこの道を通り抜け体育館へ入る。
聞こえてきた小さくはない声にうんざりするが今日は事情が違った。
聞き覚えのある名前が繰り返される。名前さんの名前だ。黄瀬のファンが話してることなんてロクなことじゃないだろう。俺は深く同情した。

「名前ちゃんってやっぱ黄瀬くんの彼女なのかな」
「この前練習試合のときベンチにいたんでしょ…?」
「ね、聞いた?隣のクラスの黄瀬くんファンが呼び出したらしいよ」
「え、なにそれ知らない!いつ!?」
「今日の放課後。多分もうすぐ」

それを聞いて入ったばかりの体育館を飛び出す。名前さんが呼び出されてる?しかも呼び出した側は数人はいるらしい。どこに呼び出されてるか聞いてないが慌てて一年の教室がある校舎へ走り黄瀬を探す。
背の高さ、頭の色ですぐに見つかる。俺に気付くと呑気に「笠松センパイ!こんなとこまでどうしたんスか?」と手を振る。
人の目を気にして黄瀬を引っ張り廊下の角へ曲がった。

「どうしたじゃない。名前さんが大変だ」

それにすぐ黄瀬の顔色が変わる。

「えっ、名前がどうしたんスか!怪我!?事故!?どこの病院!?」
「違う。…お前のファンに呼び出されたんだ」
「へ?」
「さっきお前のファンたちが言ってた。もう呼び出されてるらしい」

人のこと言えないが俺より興奮しかねない黄瀬に慎重に伝える。だが予想外に黄瀬は「ああ、」と薄い反応を見せた。
落ち着いて、と俺を宥めた。場違いな反応に驚く。言った途端走り出しても不思議はないと思っていたのに。
そんな俺に気付いたのか少し気まずそうに頭をかいた。

「…名前は優しいから俺が行ったら怒るっスよ」
「はあ?」
「大丈夫っス。伊達に俺の彼女やってないんで」

黄瀬はにんまりと笑った。「前に言ったでしょ?」と続ける。

「優しいだけじゃなくて、名前は頭良いし綺麗だし、強い子なんスよ」


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