小悪魔彼女

負けた。
誠凛のチームがはしゃぐ声と周りのギャラリーがどよめく声を聞きながら黒子と火神を見つめる。正直驚いた。それは自分だけじゃないらしく周りを見ればその場に立ち尽くしていた。
「おい、黄瀬泣いてね?」「え?負けたのはわかるけど練習試合…だよな?」と聞こえてきた声に黄瀬を見れば顔を腕でごしごしと擦っていた。まじで泣いてんのかよ。走ってそのまま蹴りをいれる。

「ほら集合すんぞ!」
「は、はい!」

目を赤くして着いてくる黄瀬。それを見たあとちらっと黄瀬の彼女である名前さんを盗み見た。
彼女は満足そうに、笑っていた。






「なんで笑ってたの」
「え?」
「試合終わったとき。…試合前も笑ってたけど」

黄瀬が黒子を追って先に帰ったのを送り出した名前さんに、タイミングを見計らい話しかける。きょとんととぼけた顔をした今はさっきまでと違いいつもの名前さんのようだった。

「だって良いもの見れたじゃないですか」
「確かに黒子と火神のあれはすげぇプレーだったけど」
「…もちろんその通りなんですけど。一番は、涼太の泣いてるとこ」
「……はあ?」

思わず声を荒げてしまう。男の泣いてるとこって見たいかフツー!?
それとも黄瀬馬鹿の性で、泣いてるところも見てみたいってやつなのか……?

「涼太は帝光でバスケ始めたから負け知らずだったんです。だから、負けて鼻っ柱折れたらもっとバスケに夢中になるんじゃないかなーって思ってたんです」
「…。じゃあ、今日は負けるところを観に来たと?」
「まさか!今日来たのは本当に黒子くんを見たくて」

笑顔で話す彼女に顔が引き攣る。どれが本気なんだか分からなくなってきた。黒子がいるなら誠凛でも良かったと言ってたがあれも本当に冗談だったんだろうか。とにかく黄瀬の泣き顔が見たかったというのは恐るべき変人である。
彼氏の鼻っ柱を折らせたいなんて彼女の黄瀬馬鹿も実は違うんじゃないかと疑ってしまう。
またしても名前さんの認識が俺の中で書き換えられる。

「名前さんって……けっこう性格悪いんですね」
「そうですか?」

私の一番は涼太ですよ?

にこやかに言った彼女は監督に提案した練習のメニューの相談のために体育館をあとにした。
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