子犬系彼氏

「えー、知ってるだろうが黄瀬の彼女さんだ」
「お世話になります」

監督の横でにこやかにお辞儀をする名前さん。黄瀬を除いた俺たちはポカンとする。黄瀬はといえば浮かない顔。
今日は例の誠凛高校との練習試合の日だ。いつもは練習さえ観に来ない彼女が今日監督にベンチで見学させてくれと頼み込んだ。もちろん監督は反対したが彼女が帝光中のマネージャーだったこと、観せてくれたら練習メニューの相談に乗ると伝えれば黄瀬を獲得したことに喜んでいた監督が首を振らないはずがなく。彼女はベンチにいることになった。

「…で、なんでコート半分なんです?」
「相手はこっちより格下だからな。ウォーミングアップのつもりで」
「…へえ?ウォーミングアップ?そんなこと言ってていいんですか」
「ちょ、名前!おさえて!!」

沈んでいた黄瀬が慌てて止めに入る。監督はこれ幸いと反対のコートへ指示に向かった。
今日の彼女はいつもより熱が入ってる気がする。

「体育館の場所分からないだろうから迎えに行ってくるっス」
「私も行く!」
「名前は駄目。ここにいて」
「えー!涼太だけずるい」
「どうせここに連れて来るんだから」
「……うん、分かった」

黄瀬が行ってしまうと彼女はベンチに座る。耐えず笑みがこぼれているのはなんなんだろうか。

「あ、笠松先輩!頑張ってくださいね」
「…ども。なんか今日は嬉しそうだな」
「分かります?久しぶりに黒子くんに会えるからドキドキしてます」
「黒子くん?キセキの?」
「そうです。私、涼太より前からバスケ部入ってたんですけどよく話してたんですよ」
「なんで高校入ってバスケ離れたんだ?」

そう聞けば苦笑いを作る。

「んー、ほんとはマネージャーしたいの山々なんですけどね。私、凄いプレーとか見ちゃうとその人に惚れちゃうんですよね」
「へ?」
「もちろんバスケットプレーヤーとしてですけど。涼太、それ嫌みたいだから」

なるほど、だから今日は名前さんが機嫌が良くて黄瀬が沈んでたのか。練習を観に来ない理由も納得がいった。

「でも今日は黒子くんに会えるから。我慢出来なくて観に来ちゃいました」
「それでベンチで観るって極端なんじゃないか?」
「まー、見るならベストポジションで見たいじゃないですか」

ガヤガヤと周りがざわめく。どうやら到着したらしい。

「えっ、ちょっと笠松先輩!なに名前と話してんです!?」
「別に変なこと話してねえから」
「黒子くん!」
「名前さん、お久しぶりです。黄瀬くんと同じ学校に行ったんですね」
「黒子くんがバスケ部入ったなら誠凛でも良かったなー」
「名前!?なにそれ!やめてよ!」
「あはは…冗談」

笑顔で話す名前さん。表情が変わらない黒子と呼ばれてる奴。情けない顔の黄瀬。
なんとなく中学の構図が分かってきた。やっぱりバスケ>黄瀬は当たりらしい。

「久しぶりに見せてね!黒子くんのプレー」

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