穏和的彼女

バスケ部との関わりといったら黄瀬の彼女ってくらいしかない名前さんと昼休みに購買で出くわした。
同じ学校なんだから見かけてもおかしくないが一対一は初めて。お互い変な空気の中挨拶をする。こんな時は黄瀬のいつでも楽しそうな性格が羨ましいと思う。

「こんにちは、笠松先輩」
「あ、ああ」
「練習どうですか」
「毎日頑張ってます」
「…先輩、私後輩なんですから敬語じゃなくていいですよ」
「え、ああ…」
「しかもさっきから頷いてばっかです」

ふふ、と笑う名前さん。確かにそうなんだが今まで部以外の後輩の女子なんて関わりがなかったためどう話していいのか分からない。
逆に彼女の方が落ち着いていて参ってしまう。

「涼太は迷惑かけてませんか?」
「…段々扱い方が慣れてきたってとこかな」
「あー、まあ中学でいじられてばっかだったんで雑な扱いしても大丈夫だと思いますよ」

もしなにかあったら懲らしめるのに協力するんで!と拳を見せる。
どうやらバスケ馬鹿>黄瀬馬鹿らしい。

「中学といえば、今度帝光中で同じキセキの世代だった一人がいる高校と練習試合が決まりましたよ」
「え、」
「東京にある誠凛高校です。確か今日黄瀬がその元チームメイト会いに行くとかなんとか」

何気なく言ったつもりだったが、名前さんの顔色が変わった。

「名前さん?」
「、あ…すみません。ちょっとびっくりして」
「いや、それは平気…だが」
「そろそろ教室戻りますね。教えてくれてありがとうございました」

慌てて帰って行く彼女に笠松は首を傾げつつ自分のクラスへ戻った。教室に着いた頃にはすっかり忘れていたのだが。




「あ、笠松先輩!」
「…いつも楽しそうでいいなお前は」
「なんスかそれ。てかそんなことより!先輩名前に今度の試合のこと話したでしょう!」
「ああ、そういえば話した」
「なんてことするんスか!あーあ、絶対観に来る」
「試合をか?」

頭を抱え恨めしそうな目でこっちを見る。訳が分からない。ファン達には嬉しそうに手を振ってるのに彼女に観られるのは嫌なんだろうか。

「そうっスよ。いつもは来ないでってお願いしてるから来ないっスけど今回は無理にでも来る……」
「どうせ勝つからいいだろ」

そう言えばむっとした顔のまま立ち止まった。同じように立ち止まれば仕方ないといった顔を作る。

「……そうっスね。勝って良いとこ見せてやる」

なんだかよく分からないが試合に向けて燃えているから良しとしよう。
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