彼女と彼氏
「名前ー!見てたっスよさっきの!格好良かった!惚れ直した!」
「うるさい涼太。ていうか見てたの?」
「……笠松先輩が心配だって言うから」
じっと見てくる名前さんから目を逸らして俺のせいにする黄瀬。その会話に俺は溜息を吐いた。
「笠松先輩、ありがとうございます。心配してくれて」
「あ、いや…」
「名前、俺は!俺には!」
名前さんの周りを行ったり来たりする黄瀬に「涼太うるさい」と一喝した。
「もう大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。たまにいるんですよねーああいう人たち」
苦笑いを浮かべる彼女は落ち着いたもんだった。もしかしたら付き合う前にもこういうことがあったのかもしれない。中学ではマネージャーやってたらしいし。プレーに惚れるらしいし。黒子って奴にああいう態度だったんならキセキの世代の奴らにも同じようだとすると女子の風当たりが悪かっただろう。
「中学でもあったのか?」
「そこそこ。涼太ほどじゃありませんけど人気ある人いましたし」
「それは大変そうだな…暴力的なことはないのか?」
「いざという時はこっちもそういう対策がありますから。全然平気ですよ」
「そ、そうか…」
普通の顔して言う名前さんに顔が引き攣る。真面目な子だと思ってたのに怖かったり未だに名前さんのキャラが分からない。良い子だと思うが性格が悪いとも思う。
「…最近名前も笠松先輩にばっか話しかけてる」
「うん?」
「まさか名前、笠松先輩に惚れたとか言わないっスよね!?やめて!別れないっスよ!」
「なに言ってんの。私はいつでも涼太が一番なんだから」
「…っ、名前!好き!」
「私もだよ」
ぎゅーっと抱き合う二人。はいはいと乾いた目でその光景を見る。もう慣れたぞ。
分かることは、名前さんも黄瀬と同じく彼氏馬鹿だということだ。ああもう、勝手にやってくれ。