ガチャッ

「…」
「…ちっ」
「おいちょっと待て!なんで目が合っただけで舌打ちだよ!」

旅の途中、珍しく宿に泊まり一泊した朝、部屋を出たらちょうど廊下を通っていたルークがいた。いやいや、ルークに舌打ちしたんじゃないよ。朝イチだからって身なりきちんとしてない私に腹立ったんだよ。

「ごめんごめん、今日一番に見た人がルークだったから思わず出ちゃった」
「心ん中で言ってるのと口で言ってんの逆だろそれ」

軽く睨みながら言うルーク。もう私とルークの話の内容はいつもこんなくだらない端から見たらどうでも良いような会話。なんにも変わってない。

「…寝間着か?それ」
「そう。だからまた後でね」

そう言って扉を閉めようとしたら待てって呼び止められた。なんだよ、この間抜けな姿見てたってルークに何も得なことないじゃんか!

「後でってなんだよ。何か用事で出ようとしたんじゃねーの?」
「…そうだよ。でもタイミング抜群にルークくんに会っちゃったからさー。まさかこんな早くから出歩いてるとは思わなかったからこんな格好だったけどルークいたからいいやバイバイ」
「会話強制終了させんなって。ていうかなんだよ。俺が悪いの?」
「別にルークは悪くないって。…ちょ、この格好恥ずかしいんだって。用事は着替えてからするからいい」
「だーかーらーっ」

ルークは何が気にいらないのか軽く叫びながら私の顔を睨む。そしてすぐに目を逸らし口を尖らせてボソッと呟いた。

「俺が…けど…」
「え?」
「俺が!……その用事…代わりに行っても…良いって、言ってんだよ」
「……」

驚いた。あのルークが!そんな事言い出すなんて!もしや何処かにガイもいるんじゃないかと辺りを見てみたけどこの時間、いるのは私とルークだけらしい。
このルークらしからぬ発言に一回ボケを言った方が良いのか悩んでいるうちにまた一言。

「もしかして、1日かかるのか?」
「え…ううん。ティアにお願いがあるだけ……流石に朝にルークがティアのお部屋訪問はまずいから折角だけどやっぱり私が行くよ」

そ、そっか…と赤くなって言うルーク。

「で、お願いって?」
「そこは聞くんかい、…今日はルークの超振動特訓お休みしてって」
「…え」
「そ、その…やっぱ特別な日だし…プレゼントに…って……」
「………」

うわあ、なんで本人に言ってるんだ!
こんな予定じゃなかったのに!ただちょっとでもルークと喋る時間が欲しかったっていうか。まあ今も喋ってるけどこんな格好じゃなくて!ふ、普通に…。

「…」
「あ、あはは。やっぱやめる!変な空気にしてすまなかったねルークくん!じゃあ私部屋にもどっ」

ガシッ

扉を閉めようとしたらまたしても邪魔された。今度は言葉ではなく、ルークの手で。

「…今日1日、空いてんな」
「え?」
「もう予定入れんなよ!出かけるから」

ルークはそれだけ言うと扉から手を放しスタスタと歩いていく。その先はさっきルークが歩いてきた方向だった。

「ちょ、ルーク!?何か用あって部屋出たんじゃないの!?」
「…いいんだよ」

これ言うために来ただけだから、そう言ってまた歩き出す。
私はその言葉に固まって真っ赤になりながら彼を見つめていた。

彼が角を曲がって見えなくなるまで見つめていたけど、彼の方も耳が赤くなっていったように見えた。

「(ていうか今日、覚えてたんだ…)」


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