「入江さん、私はいらない子なんでしょうか」
「……なにそれ?」
「メンツ上のパーティーではドレスに躓き転ぶし事務仕事は書き間違えばっかり。紅茶を運べば毎回こぼす始末です」
「それはすごいドジだね」
「だから、ボスに余計な心配をかけて目の届く範囲にいるようにと言われたんです」

正一の執務室の隅を陣取り体育座りで語るボンゴレファミリーの名前。なにかと落ち込むとこうして正一のところへ駆け込むことが多い。名前曰く「一番まともな人だから」。確かにボンゴレファミリーの面々はいろんな意味でのまもとじゃない人が揃ってる、と正一は聞いた時に納得した。あの中では自分は一般人の部類だろう。
正一の都合を考えずやって来る名前は正直面倒に思う。それでも話を聞いてしまうから、彼女はやって来るのだろう。

「…で、どうして目の届く範囲にいるように言われていらない子になるわけ?」
「だって、近くにいないと何をしでかすか分からないから目をつけておくんでしょう?私、ボスから信頼を失ったんです…もう生きていく意味もなくなってしまいました…」
「綱吉くんは名前を信頼してるよ。そんな人じゃないって名前がよく知ってるだろ」

このままいけば戦闘でもミスをするかもしれません。あ、でもこの前ビアンキ姐さんに教えてもらったこの毒をナイフに塗り込めば……と耳を塞ぎたくなることをぶつぶつと呟き始めた。
名前は戦闘はミスもなく、腕もあり女性の中ではクロームに次ぐと言われている程らしい。

「戦いは大丈夫だよ。そりゃ気を抜いたら駄目だけど名前はいつも気をつけてるし。他のことにもその集中力を使ってみなよ」
「集中力?」
「そうすれば綱吉くんだって喜ぶよ」

戦闘以外のことは無知だった名前。他のことにも興味を示せばそんな彼女のことを人一倍気にしている綱吉くんはとても喜ぶだろう。

「でも、パーティーの度ボスは私の腰を支えてるんですよ!」
「いやそれ転ばないようにってことじゃないから」

それは綱吉くんが楽しんでるだけだから。
口には出さずにツッコむ。目の届く範囲にいるようにってのもただの独占欲だ。周りから見れば明らかなのにこの子はそういうことには変換されないらしい。

「うう、こんな私じゃもうお役に立てないんだ。実家に帰ります」
「…その前に迎えが来たよ。ほら」

言うと同時にドアが乱暴に開く。もちろん綱吉くんだ。もう綱吉くんも名前がいなくなればここだと分かっている。
綱吉と正一が目が合えばお互い通じた様に頷き、綱吉は名前の前に膝をついた。

「名前、戻るぞ」
「…ボス、私はもう駄目です。実家に帰ります」
「目の届く範囲にいるようにって言ったはずだけど?」
「信頼できない部下を戦場に連れてくなんて出来ないでしょう?」
「誰が信頼できないなんて言った。俺は名前が大好きだし信頼してるよ」

そう言えば名前は顔をあげる。涙目の名前を見て綱吉は微笑んだ。

「あー泣いてる顔もそそるよね」

昼間からなに言ってるんだ。これほど明らかな発言もしてるのにそこは完全スルーな名前。さっきまで泣いてたのに既に笑顔だ。
僕がいること忘れられてるのかな。少なくとも名前は忘れてるな。いつものことだけど。

「帰ろう名前。今日一緒に寝る?」
「はい!」

嬉しそうに二人が出て行きドアが閉じられた。ふう、正一は溜息をついた。もう勝手にしてくれ。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -