体育館のそばにはキレイに手入れされている木や草がたくさんある。毎日同じところに存在するそれに注目する生徒なんてなかなかいない。つまり絶好の隠れ場所である。

「あ、来た!今出てきた!」
「一気に出てきたけど。どれ?」
「いちばん恰好良い人…」
「そんなこと言われても分からないんですけど!?」

ひそひそ声でツッコミを入れる。絶好の隠れ場所と言ってはいるが好きで隠れてるんじゃない。友達の付き合いだ。ちょっと気になってる人がいる、バスケ部だから観に行きたいから着いてきてくれと頼まれこうして茂みに隠れている。バスケ部がすごいってことは帝光中なら誰でも知ってることだがこれは驚いた。なんだあの髪色のバラエティ。色んな意味ですごいわ。

「一番前で歩いてるよ。黒子くん」
「あーあれか」
「話してる青峰くんとはコンビらしくて。いつも楽しそうなの」
「(一方的に話してそれを受け流してるようにしか見えない)」

噂のキセキの世代はすぐに校舎に入って見えなくなってしまった。しかし友人は見れただけで満足らしい。いつかは告白するかもしれないけどまだまだこの状態でいいのなんて言ってると他に取られちゃうんじゃないかと思うがモデルをやってる黄瀬涼太をスルーして黒子くんが好きと言う友人の想いは本物だろう。静かに応援することにした。
二月前のことだった。



「フられた。好きな人いるんだって」

不意に報告された友人からの言葉。私からその話題について触れることはなかったし彼女もあれから私には言ってこなかった。だから告白したことも知らなかったしフられたことも当然知るわけがなかった。しかも二週間前。「立ち直ってきたから報告しました」と苦笑いする友人。落ち込んでることすら気付けなかった私は相当嫌な奴である。
こんな良い子なかなかいないのに。なんだかなぁ、と顔しか知らないくせに私の頭の中の黒子くんを責めた。



「黒子くん、ちょっといい?話があるんだけど」
「ああ?」
「あなたは…」

茂みに隠れ黒子くんを待ち伏せし、体育館に入ろうとする黒子くんを止めた。例の通り青峰くんも一緒だ。きょとんとする青峰くんと訝し気に私を見る黒子くん。いきなりこんなところから登場したんだから驚くのも無理はない。しかも彼らから見れば私は顔も知らないどこぞの女子だ。

「これはただの私の鬱憤を晴らしたいだけなので先に謝りますごめんなさい!」

今から言うことも自己満足でしかない。けど…
ぺこりと頭を下げてから私はびしっと黒子くんを指さし言った。

「あの子をフるなんてなんてもったいないんだ!私が男子だったら絶対オーケーだったぞ!!」

きょとんでもなくぽかーんとする黒子くんと青峰くん。いや、うん。当然の反応です。私があなたたちの立場だったらぽかーんだわ。むしろ関係ないだろ!って言いたくなるだろうし。でも言いたかったから言ってやったわ!!
少ししてごほん、と青峰くんが咳払いをした。

「あの、ちょっといいですか?」
「はい?」
「黒子はボクです」
「…はい?」

手をあげて話す青峰くん……いや、黒子くん?
二人を交互に見る。じゃあ、この大きい人が青峰くん?(青峰くんはものすごく呆れ顔だ)

「え、ウソでしょ?」
「いえ。僕が黒子でこっちの人が青峰くんです」
「こんなに黒いのに!!」
「肌の色関係ねえだろ!!!」

必至に反論する青峰くん。
つまりついさっき私が指さしてたのが青峰くんなのか。で、セットだと思ってた青峰くんが黒子くんだったと。

「あ、う…ごめんなさい」
「つーかさっきのなんだよ?フるフらないお前に関係なくね?」
「そこは自分でも思ってるんだけど」
「黒子の気持ちも考えろよな。急にこんなよく分からんこと言われてよー」
「…はい、ごめんなさい黒子くん」

一気に蹴落とされ視線が下になる。色々な意味で顔があげられない。すると黒子くんがまた口を開いた。

「関係ないこともないです」

表情が変わらないのは彼の生まれつきなんだろうか。けど、言われた言葉に思わず瞬く。

「保健委員の方ですよね?」
「…うん。黒子くんに告った子と一緒に」
「ボク、転んで足怪我して保健室行ったんですけど保健の先生いなかったんですよね。それで代わりに消毒してもらったんです。あなたに」
「「……えっ」」

驚く私と青峰くん。彼とは気が合いそうである。
そんなことがあったなんて。いつだろう。一年からやってるし消毒したことも何回かはあるはずで黒子くんが来たことを思い出せない。

「好きな子がいるって言って断ったんです。意味、分かりますか」
「おま、それ」
「あなたが好きです。名前さん」

指を私に向け、彼は柔らかく微笑んだ。

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