朝練が始まる時刻の40分前。いつも20分前くらいにならないと誰も来ないのに部室のドアが開いた。キィ、という扉の開く音に反応し私はボードから扉へと視線を移した。

「…赤司くん、おはよう」
「ああ、おはよう。名字さん。…随分早いな」
「準備が色々とね」
「毎朝こんな時間に?」
「朝じゃないと時間なくて」

苦笑いしつつ視線をボードに移す。ホワイトボードに書かれた二軍の練習メニュー。これを元に来週のメニューを作らなくちゃいけない。先生も酷い課題を出すものだ、と怒りたいけどさつきちゃんなら簡単にこなすんだろうと思うと「出来ない」なんて偉そうに言えなくなる。

「赤司くんは?こんな早くどうしたの?」
「今度の合宿について先生と話し合いがあるんだ」
「ああ、次のとこって遠いもんね。主将さんも大変だね」
「……」
「…赤司くん?」

じっとこっちを見つめる赤司くんを不思議に思う。どうしたんだろう。首を傾げると赤司くんは鞄を下ろさないまま私に近づいて来た。え、なに?

「ど、どうしたの?」
「お前…睡眠を取ってないだろう」
「へ?」
「隈が酷い。遠目から分かる」
「え、まじですか」

慌てて隈が出来てるであろうあたりを触る。触ったところでどうにもならないけど。お見苦しいものを見せてしまった…!

「名字は頑張りすぎだ」
「…赤司くんよりは大変じゃないよ」
「当たり前だ。俺と名字じゃ元の出来が違う」
「ええー」

そんな言い方はないでしょ、と思いながら否定が出来ない。そりゃ赤司くんには多分叶わないけど。私の隣に立ち、ボードを見る。

「…仕事を軽くするように言っておく」
「え、やめてよ。大丈夫だから」
「その負けず嫌いをどうにかしろ」
「勝つことが全ての帝光に合ってるでしょ?」
「試合中に倒れられても困るんだよ」

ぽん、と頭に手を乗っけられる。同じ部活とはいえ軍は違うしいつも話してるってわけでもない赤司くんにだ。思わず固まってしまう。

「…別に平気です」
「俺の気が散る」
「は?」

ぐに、とほっぺをつねられる。だから近い…!
そこまで身長に差はないけど赤司くんを見上げる状況になる。真顔の赤司くんにつねられる私。なんだこれ。

「試合中名字にばっかり気を取られる」
「……別に大丈夫だよ」
「大丈夫じゃない」
「いたいいたい!」

放してもらうけどじっと見つめられる。思わず目を逸らす。こんな距離でこんな美形に見つめられるとかもう心臓がうるさいです。

「…な、なんか、さっきより近くない…赤司くん…」
「大丈夫。多分なにもしない」
「多分って…!」

そう言いながらゆっくり身長の差がなくなっていく。多分って。この状況で言われても困るんですけど!

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