ポイポイと自分の家のように洗濯物を籠へ入れる征十郎。最初は驚いたけどもう慣れた。

「ねえねえ、お母さんが今日夕飯食べてくかって」
「うーん、名前と同じ食卓は嫌だけどおばさんが言うなら貰おうかな」
「なんだよそれ。…ま、今日はお望み通り私いないから」
「は?」

自分で言ったくせにどうしてだ何でだと詰め寄って来る。クッションを抱いて話してたがそれを取り上げられた。クッションを私から取り上げれば興味がなくなったのかすぐに征十郎はクッションを投げ捨てた。人が持ってるものは欲しくなる子どもみたいだと思う。

「友達と約束があって」
「誰だ」
「え?…学校の友達」
「…デートか。ふん、どうせ変な奴に騙されてるんだろ」
「違うって」

本当にそんなんじゃない。その人とは同じクラス委員で任期が終わったから最後に食事でも、といったプチ打ち上げみたいなものだ。
それをデートと言うなら堂々と家で家族と一緒にご飯食べてる征十郎はどうなるんだ。逆に私が征十郎の家に行くことは少ない。ほとんどないと言っていいかもしれない。ぼーっと考えているといつのまにか征十郎は私の携帯を手に取っていた。
ボタンを押したと思えば耳にくっつける。

「え、ちょっと、なにしてんの!」
「電話」
「馬鹿!そうじゃないでしょ!返して!」
「…あ、こんにちは」

こいつ通話しやがった。慌てて奪おうとするが立ち上がって歩き出す。身長差のせいで奪えない。くっ、昔は私のが高かったのに!

「え、ああ、名前の彼氏」
「なに言ってんの!」
「…別に。照れてるだけじゃない?」
「征十郎!」
「だからこの後の約束はなかったことにしてね。これからも名前を誘うなら違う対処法考えるから」

ピッと電源ボタンを押す。この後の約束ということは適当に鳴らしたんじゃなく通話相手を探したんだろう。

「…もういらない」
「征十郎!」
「前に言ったことあるよね。名前は俺のだって」
「え?…言ったっけ」
「忘れてるならもう一回言っておくよ。分かってるだろ、人に奪われるのって嫌いなんだ」
「ああ、それはもうすごく」

呆れるように頷けば征十郎は笑った。

「じゃあ、言う通りにしてね」

征十郎に逆らえるはずもなく。かつて自分が征十郎に振り回されずに生きてきたことがない。麻痺ってやつだ。ここまできたら自分が征十郎のものと言われても否定出来ない自分がいる。
同じ食卓は嫌って言ってたくせに今は一緒に食べるんだよ、と私に言う征十郎。

まったくこいつは子ども以上の独占欲である。

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