朝の練習を終え体育館の窓に近づきながら伸びをすると見知った女の子が登校して来たところだった。

「おはよっス名前っち」
「あ、おはよー黄瀬くん」
「今日早いっスね。いつも来るのギリギリなのに」
「日直なんだ。朝の仕事はないけど遅刻しないようにと思って。黄瀬くんこそ朝早くから部活お疲れさま」
「へへ、ありがとうっス。名前っちに会えたからパワー充電できごほおっ」

俺と名前っちがにこやかに話していると背中にボールが当たった。顎が窓の縁に当たる。めちゃくちゃ痛い。
文句を言おうと後ろにを見ればそこにいた人物に固まってしまう。

「あ、赤司っち…」
「片付けをサボって名前と会話なんて良い身分だな、黄瀬」
「こら征十郎!黄瀬くんモデルなんだから顔はだめでしょ!」
「ああ、そうだったな…」
「顔はってなに!?顔以外もやめて!!」

俺に当てたボールを広う赤司っちに慌てて言う。名前っちも酷い。こういうときは流石赤司っちの幼馴染だと実感する。笑顔で言うあたりが特に。しかも名前っちが言うと許される感があるのが凄い。

「あれ、ていうか征十郎こそ片付けしたの?制服だけど」
「黄瀬一人でやらせたんだ」
「先週の罰ゲームなんスよ」
「そうなんだ。よけいお疲れさまだね」
「でも一番に名前っちに会えぐは…っ!」

またボールが飛んでくる。名前っちに言われたからか顔ではなく腹に当てられた。けどボールの威力は変わらずハンパない。この人ほんと酷い。
自分だってそういうこと言えばいいのに、と思うがこれ以上当てられたくないし黙ってることにする。

「あと少しでホームルームだ。早くしろよ」
「…はいっス」

ボールを床に転がした赤司っちは体育館の出口へと向かう。きっと名前っちのところまで行くんだろう。名前っちもそうだと思ったのかその場所から動かない。

「そうだ名前っち!」
「どうしたの?」
「赤司っちが…」






「名前、行くぞ」
「あ、ちょっと待って。ストップ」

たたっ、と名前は赤司の首元へ手を伸ばす。その行動に赤司は驚いた顔をするがじっと動かない。名前はそのまま彼のネクタイを掴み締め直した。そしてじっと赤司を見つめる。

「…なにがしたいんだ?」
「黄瀬くんが征十郎のネクタイ曲がってたから直してあげてって」
「……」
「別に曲がってないようにも思うけど黄瀬くんが言ってたから一応ね。征十郎が喋るまで私は黙っててって言われて…どしたの?」
「別に」

顔を背けすたすたと歩き出した赤司っちを追いかける名前っち。あーあ、折角シチュエーション作ってあげたのに。この二人ほんと焦れったいなあ。
黄瀬は窓を閉め苦笑いした。赤司っちのヘタレ。


片付けを再開した俺にボールが飛ぶまであと十数秒。

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