「ねえねえ、緑間くんとか私と相性いいと思わない?」

そんな声が聞こえたのはついさっきのこと。名前の声が部室に響き足を止めた。相性?緑間っち?名前がそんなこと考えたなんて。驚きよりも焦りを感じた。赤司っちに聞かれたら大変なことになるッスよ!
青峰っちもいるのか「いや、あいつ頭固いから無理だろ」という声が聞こえた。名前は落ち込んだ様子もなくそっかと頷いた。

「じゃあ黒子くん」
「はぁ?テツをお前の気まぐれに付き合わせんなよ」
「えー、じゃあ青峰くんが付き合ってよ」
「お前となんかヤダ」

男の名前を次々に出す名前にえええっと思う。誰でもいいんスか!そんな軽い女だったんスか!?つーかほんと赤司っちが怒るッスよ青峰っちも名前の口止めてえええ!

「ぶーぶー」
「うっせえ」
「青峰が頷いてくれないから。もう、仕方ないから黄瀬でも誘うよ」
「ああ、あいつならいいんじゃね?そういうの一番慣れてるだろ」
「ちょ、なにそれ!」

思わず声に出してしまう。気付かれたろうから部室の扉を開けた。名前と青峰っちは椅子を向かいあって話してたらしい。名前は扉に背を向けてたため首だけ振り返ってこっちを見た。

「名前がそんな子だと思わなかったッスよ!」
「え?」
「だっておかしくね?男なら誰でもいいんスか。しかも仕方ないから俺って!一番慣れてるって!酷いッスよ!」
「…怒ってるの?」

きょとんとしている名前と眉を顰める青峰っちが口を開く。勘違い?聞き返そうとすればガチャリとすぐ後ろで扉の開く音。振り返れば赤司っちが睨んでいた。出た…!

「…そんなとこで突っ立ってると邪魔だ、黄瀬」
「すいません!」
「征十郎、黄瀬が煩いんだけど」
「いつものことだろう」
「ひど!赤司っちも酷い!」

必死に抗議するが名前も青峰っちも、赤司っも応えてくれない。それどころか赤司っちは紙をバインダーに挟み、置いてある鉛筆を手に取りなにか聞き込み始めた。
俺は会話に参加しないという主張が伝わってくる。

「ねー、黄瀬ー」
「断るッス。まだ俺怒ってるんスよ!」

手を合わせお願いのポーズをする名前。けど俺は頬を膨らませてプイッとそっぽを向いた。それに怒ってなくても、と続ける。

「名前とは仲良いと思ってるけど、それ以上には考えらんねッス」

ボキッ

え?ボキッ?なにかが折れる音がした。途端に名前と青峰っちの顔が青くなる。そこで気付いた。しまった。さっき赤司っちが聞いたらどうの考えてたくせに、自分で…
「あ、俺テツに言うことあった」と青峰っちがそそくさと廊下へ逃げて行った。ゆっくり振り返れば赤司っちは折れた鉛筆を握りしめたまま俺を見る。笑顔が怖い!

「どういうこと?名前」
「いやあの、私も事態が飲み込めない…」
「な、なに言うんスか!緑間っちと相性がいいとか青峰っちに付き合ってとか言ってたじゃないスか!」
「え、それ…」
「黄瀬、それはお笑いの相方探しだ」
「……へ?」
「今度そういう大会あるらしくて。出たいなーって思って」

普通なら怒ってるだろうが赤司っちがいるからか苦笑いする。青峰っちの勘違いって、そういうことか。うわ、最悪だ。ここで名前が青峰っちのように逃げずにいてくれることがありがたい。やっぱり名前は名前だった。誤解してたことが申し訳なくなる。

「黄瀬、そういうことだ。名前が青峰と付き合うとかお前に告白するとか本当有り得ないから」
「ははははい!ごめんなさい!名前も!」
「いいよ大丈夫だよ。ほら征十郎、鉛筆。新しいの」

鉛筆を赤司っちに渡し両肩に手を置く名前。少し大人しくなった気がする。流石、赤司っちの宥め方はお手の物だ。名前は俺に大丈夫だと目線を送る。ありがとッス、名前!

「征十郎、大丈夫だよ。黄瀬の誤解だから。緑間くんにも青峰にも黄瀬にも告んないし」
「…黒子は」
「え?…まあ黒子くんも」
「おい、間があったぞ」
「告らないって」
「…紫原」
「大丈夫だから!!しつこい!」

赤司っちをそんな風に言えるのも名前だけだ。心底感謝しながら俺は静かに部室を出た。

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