え、どういう状況?

目が覚めて一番に思ったのはそれだった。さっきまで私はリビングでテレビを見ていて、途中からうとうとし始めた。ソファに座ったまま眠ってしまったらしい。まあ、ここまではよくあることだ。「あ、寝ちゃった」で済ますことが出来る。
けど今回目を覚ますと足に重みがあった。寝ぼけたまま見れば、幼馴染である赤司征十郎がすやすやと寝息をたてて私の太ももを枕にしていた。
その状況に一気に目が覚める。

「な、なんで征十郎…?」

家族も出掛けて家に一人だったはずだ。どうやって入って来た。そしてこの状況はなんだ。
寝てたせいで悪魔がやって来たことに気付かないなんて!!!

「征十郎?ねえ、起きてる?」
「……」
「征ってば」
「……」
「足痺れたんだけど落として良いですか」
「落としたら殺す」
「起きてんじゃん!」

目を閉じたまま動こうとしない征十郎に早くどいて!と両手で頭を持ち上げる。これには征も渋々起きてくれた。
いや、叩くより良くない?征を叩くなんて自分から死にに行くようなものだ。絶対しないけど。軽く叩いたんだとしてもきっとそれより何倍もの苦渋の仕打ちが待ってるに違いない。

「どうして家にいるの!」
「そこの通りでおばさんに会ってね。ちょうど行こうと思ってたって言ったら名前が寝てるかもしれないからって鍵渡された」
「どうして私を枕に!」
「全然起きないから」
「お、起きたでしょ」
「結構あのまま起きなかったけど」
「……」
「あ、鍵はちゃんと棚の引き出しにしまっておいたから」

もう家の鍵の位置まで知られているらしい。すごいな。もうここの住人と変わらない知識度だ。
征はそんな私を見て呆れたように溜息をついた。

「家に来てって名前が呼んだんでしょ」
「え、私が?」
「メール」
「……?あ、この送信日時…黄瀬くんに携帯取られてた、んだけど」
「……」
「ご、ごめん!ていうか私のせいじゃないって!黄瀬くんでしょ!!」
「なら、どうして黄瀬に携帯渡してるの」
「休み時間不意打ちで取られたんです!」

爽やかな笑顔なときこそ征は機嫌が悪い。長年の付き合いで知ってるから余計に恐怖を感じる。こういうときのこいつは何をしでかすか分からない。
こういう時は気を剃らすしかない。

「征十郎、アイス食べる?」
「食べない」
「お腹は?空いてない?」
「うん」
「テレビ」
「見ない」
「…」

即答で返され詰まってしまう。
くう、上手くいかない。どうしようか考えると少しの沈黙の後、ぼそっと征十郎が呟いた。

「ていうかまだ眠いんだよね」
「…布団用意してきます!」
「そうじゃないだろ」
「え、ごめん」

眠いって言ったくせに。
睨まれてすぐ謝るのはクセになってる。だって征十郎だもん。仕方ない。

「座れ」
「はい」
「動くな」
「はいっ」

命令口調にも反応してしまうのももう仕方ない。
言葉通りソファに座ればさっきのように枕にされた。今度は私が寝てない分雑に頭を置かれる。

「…もしかしてこれで寝るつもり?」
「名前も寝ていいよ。動かなければ」
「やだ!絶対また痺れる!」
「いい?動いたら殺すからね」
「……はい」

やっぱりこの人には逆らえなかった。

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