笑う日


「ここが俺の部屋」
「ふうん」
「……入らないの?」
「まず私の部屋に行きたいんだけど」

荷物置きたいしと口を尖らせる三咲。大きな荷物は送ってもらったとはいえ手ぶらでイタリアまで来たわけじゃない。ハンドバッグというにはそこそこ大きい鞄は早く降ろしたい。それに、まず自分の部屋のが気になるのは当たり前だよね!!誰だって!
言えば綱吉さんは「んじゃ入れよ」と一歩も動かない。

「あの、綱吉さん?だからどこの部屋か分からないんですけど」
「ここ」
「え、」
「ここ」
「それって…同じ部屋ってことですか」

驚いて言葉を詰まらせる。両親に挨拶はした。仕事があるとはいえイタリアまでわざわざ着いてきたんだから別にこうなっても可笑しいことではない、んだろう。

「嫌?」
「嫌…ていうか驚いたっていうか」
「三咲が抵抗あるなら別の部屋でもいい。今はまだ」
「そういう意味じゃなくて。綱吉さんのが同室嫌そうじゃないですか」
「なんで」
「だって!喧嘩ばっかするし!ムカつきません!?」
「おまえが言うんだ…」

呆れた表情を見せる綱吉さん。だって今までベッドはどっちが占拠するかで蹴り合いしたりそんなことばかりしてたじゃないですか。同棲の話聞いたときもツナさんの住む家ならだだっ広いとこで家は一緒でも部屋は別々だと疑わなかった。私はそういうの平気な性格だけど。仕事でもほとんど一緒だし、ツナさん一人の時間が欲しそうだけどな。
考えてると頭に手をのせられる。見上げれば苦笑いしたツナさん。

「お前がずっとこの部屋にいるとは思えないから、一緒がいいの」
「はい?どういう意味ですか」
「隣の部屋、見てみ」

含んだ笑みで言われてとりあえず隣の部屋のドアへ進む。表札を見て三咲は目を見開いた。ネームプレートには「Syouichi Irie」の文字。

「正、ちゃん…?」
「どうせ正一くんもイタリアなら部屋貸してあげようと思って。この屋敷の住人は全員信頼できる人って決めてるから」
「いやいやいや!隣が正ちゃんって…」
「この方が喜ぶだろ?おまえ」

金持ちのやることは本当に大がかりだ…!確かに正ちゃんのイタリア行きと私たちのイタリア行きが決まったのはほぼ同時期だけど。空港でふたりでひそひそ話してたのも正ちゃんが逃げるように去ってったのもこのためか!!!
その時、ガチャリとドアが開いた。

「…人の部屋の前で騒がしいんですけど、自分たちの部屋でやってくれませんか」
「ほ、ほんとに正ちゃんだーーー!!」
「うわっ、もう、三咲!」
「久しぶり、正一くん」
「…お久しぶりです。有難く部屋使わせてもらってます」
「ちゃんと使っててくれて安心したよ。実際違うところ使ってたらどうしようと思ってた」
「ははは…空港着いた途端出迎えられて。半強制的にここまで…」
「ええ!綱吉さん!正ちゃんにまでそんな強引に」
「俺のおかげで正一くんとお隣さんなんだろ」
「……」
「……ぐっじょぶ」
「三咲!!」

正一の腕に抱き着く三咲。綱吉の前でと慌てる正一と呆れる綱吉。そして、話し声にかけつけたのか獄寺と山本も上がってきた。

「はあ!?あいつ十代目の恋人なんじゃ…なんで入江に!」
「…ご、獄寺さんいつからそこに」
「っせえ、まだお前を認めてねえぞ!」
「ばーかばーか」
「んだとっ」

ぎゃーぎゃー始めた三咲と獄寺を見守る綱吉と山本。正一は今だ!と思ったのか部屋に逃げてしまった。

「はは、獄寺のああいうやりとり懐かしいなー」
「うん。昔はランボとかハルとかにあんな感じだったね…変わってないなあ」
「正一くんと彼女、仲いいって聞いてたけどいいのか?」
「うん。正一くんあってのああいうやつだし。今はまだみんなでわいわいやってるのが楽しいし」
「ツナがいいならいいけどなー」

苦笑いする山本にツナはふふんと笑った。

「それに、一番はどうやら俺らしいから」

それに驚いた顔をする山本だったがすぐに「幸せそうでなにより」と笑った。

20140502

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