認識した日




「雲雀さん許してください」
「駄目だよ。これぐらいやらなきゃ将来苦労するよ」
「もう机に詰めないくらいの量じゃないですか。はん、大企業は苦労して大企業になったんすねちくしょう!」
「……」


反抗する私に無言の圧力をかけてくる雲雀さん。もう随分雲雀さんとこの攻防戦を繰り広げている。何を、というとパソコンを使ったスケジュール作り。「社長のスケジュールを管理するのは秘書の勤めだ。…とりあえず慣れるために過去のスケジュールあるから同じ様に作ろうか」と言う雲雀さんとパソコンの前でワンツーマン。機械音痴な私にこんなこと教えてもなんの意味もないじゃない…!
するとパソコンのキーボードの横に置いてある時計からピピピッ、とアラームが鳴った。


「もう時間だ。今日は終わるよ。明日までにこれ出来るようにしといて」
「うええ」
「奇声は言わない」
「無理です絶対!だってこの量でしょ!?」
「頑張って」
「雲雀さんの鬼!」
「知らないよ。ほら、綱吉のとこに行く時間だ」
「………はい」


特別にこの会社に入った私には社長じゃないけどスケジュールが組まれてる。秘書の仕事を学ぶ時間と秘書として働く時間。今から秘書として働く時間に切り替わる。そう、あの人の下に行かなきゃいけない。


「はぁ、また散々言われるんでしょうね…」
「頑張って」


それだけですか雲雀さん。助けてと目で訴えても我関せずを決め込む雲雀さんを見て溜息をつく。


「それに、三咲なら綱吉の毒舌に対抗出来るでしょ」
「過大評価しすぎですねそれ」
「そんなことないよ。君が綱吉の所有物って言われた時とか」
「ちょっとおお!変な言い回ししないでください」
「綱吉にあんなに言う女は初めて見た」
「だから、あれは社長が最初に言ったからです」


別に所有物ってわけじゃない断じて。それは最初に言っときます。私は私のもの他人の人も私の……じゃなかった。そういう話じゃなくて、あれは秘書になることを了解した時のこと。


「えーっと…あなたがここの社長でこれから私が秘書……ってこと、ですよね?」
「そうだよ。何度も言わすな」
「なんで私なんですか。秘書やるのは良いですよ別に。お金入るし」
「良いんだ」
「私が言うことじゃないですけど他に良い人いっぱいいたでしょう?面接試験だってしてないし…」
「うん。お前より良い人材なんて沢山いた。ていうかお前より悪い奴なんていないよ」
「じゃあなんで」


そう言うと彼は深刻な顔になり「実は、」と切り出した。


「俺の……先生、って言えばいいのかな。一応部下扱いなんだけど仕事の事とか助言したり仕事をしてくれてるリボーンって奴がいるんだ」
「はあ」
「秘書だった奴を勝手に首にしたらこっぴどく叱られてさ。あんまり五月蝿いから『分かった。じゃあ俺が新しい秘書を決める』って言っちゃったんだよね」
「…だから、なんで私!?」
「……………どうせなら、話したことあるやつのがいいなーって思って」


それはあれか。私が道に迷ってる時か。そんな軽い感じで秘書決めて良いの!?あの時既に私のことダメ出ししてたじゃん!


「俺が決めたんだから良いの。まあ俺のやるべき事は終わったし?三咲がこれから苦労して真面目に学んで立派な秘書になれば問題無いわけだし」


ソファーにぼふんと座り足を組んで言うお得意さ…社長。うわあ、この人を社長って呼ばなきゃいけないのか。こんな人社長でよく大企業になれたなボンゴレカンパニー。


「…って、自分のやる事終わったら全部ほっぽりだし!?私苦労すんの嫌です」
「はあ?せっかく雇ってやったんだからきっちり働けよ。」
「嫌ですよ社長みたいな人が上司なんて」
「おいこら、せめて本人がいないとこで言え」
「あっ、ごめんなさい根が正直なもんで」
「うぜー」


そう言ってふっ、と笑う。うざいとか言いつつ少し楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。初めて会った時から思ってたけど、この人はこういう皮肉混じりのトークを素で楽しんでるような気がする。


「ま、俺はお前が苦労してる姿を見て楽しむから。お前は俺のピエロだ」
「死ねよ」


この人意地悪っていうより俺様なんだ。いや私も相当ワガママな人間だと思ってたけど(自覚してる分マシだと思う)まさか上がいたなんて…




認識した日
(楽しんでるように見えたの私を貶してるからか!?)


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