茶化す日


「あの、実はまだ三咲に話してないのですが皆さんに許してほしいことがあります」

三咲がお茶を汲みに席を外しているとき、姿勢を正し話を持ち出した。緊張が伝わったのか驚いた様子で三咲の家族全員が俺を見る。はじめは駄目かもと思った。あの空気で口に出せるものじゃない。絶対許してもらえない。けど今は確信があった。この人たちは、絶対許してくれる。





「はーい、お茶入ったよ」
「お、おお!三咲!よく戻った俺の娘!」
「はあ?」
「ちょ、お父さん!変に気使いすぎです!普通に、普通にしてください!」
「あ、ああ…そうだな。いかんいかん」
「……?」

変ににやにやする家族たちを見ながら首を傾げる三咲。なにこの家族、分かりやすすぎるだろ、と綱吉は遠い目をする。この家に正一くんがいたら、毎日祝いの席かってほどの料理が出てきそうだ。

「綱吉くん、お酒は日本酒?ビール?ワイン?」
「あ、いえ、車ですので」
「そんなの三咲が乗っけて帰りますよ!綱吉くんは飲んでってよ。ていうか泊まってって」
「ちょっと、お茶淹れさせておいて飲まない気!?」

隣に座り怒る三咲。お茶を乗せたお盆をガンッと机に置いた。

「三咲運転できたの?」
「免許は持ってますよ」
「三咲の茶じゃ酔えないだろ」
「けどお酒より美味しい」
「いや、酒のが美味いね!!」

父親と喧嘩を始める三咲。それを無視して母が綱吉に酒を出す。段々この家族の関係図が見えてきた。

「ごめんなさいね、五月蝿くて」
「いえ、僕の家も五月蝿いので」
「へえ、お金持ちのお家ってお淑やかなイメージがあるけど」
「ウチは居候が多くて。一回り下なのが結構いるのでずいぶん騒がしいですよ」
「まあそうなの」
「だからですかね、彼女みたいに明るくて元気な人といると安心するんです」
「なら良かった。五月蝿さならなかなか勝てる子いないわよ。ウチの子」
「…あ、はは」
「そんな私たちに気を使わなくていいのよ。あの子が我儘言うから喧嘩になるんでしょう?喧嘩中しか綱吉さんの話を聞かなかったから分からなかったけど、綱吉さんと会ったらあの子の我儘がいけないんだって察しはついたわ」
「あ、いや…あれは本当に僕が悪かったんです。三咲だけが原因じゃないです」

慌てて訂正する。勝手に力不足だと思って会社に来なくていいと言った。三咲のためだなんてとんだ思い違いだ。三咲はちゃんとリボーンに立ち向かって認めさせた。俺のエゴだったと分かったのは随分後で苦々しく思う。
話を終え三咲に注意を向ければまだお父さんと言い合いをしていた。今は「どちらの方がなになにだ」という言い合いをしているらしい。

「俺の方が体力ある」
「私の方が負けん気強い」
「俺の方が足速い」
「私の方がケーキに詳しい」
「俺の方が三半規管強い」

言い争ってると遮るように着信音が鳴る。一瞬反応したが三咲からだったらしい。画面をタッチし「もしもし」と話しはじめた。

「綱吉さん、なんかリボーンさんが例の件の準備が整ったそうです。」
「えっ、あ、そう」
「例の件ってなんですか?」
「えっと……」
「三咲!お茶冷めてるわよ!」
「あ、ほんとだ」

お母さんのアシストで意識はそっちにいったらしい。ずず、とお茶を飲み始める三咲にほっと息をつく。くそ、なんで俺にじゃなくて三咲にかけるんだ。…まあとにかく、準備が整った。自分でやるべきことも終わった。これで全ての準備が整ったことになる。

いよいよ、日本とはお別れだ。

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