憂う日


「正ちゃん、出発はいつなの?」
「来週」
「…本当急だよね」
「ごめん」
「まあいいけどさ。それにしては荷物少なくない?」
「家具とかはあっちで新しく調達するつもりだから。欲しいのあったら持ってっていいよ」
「…こたつ」
「ん、いいよ」

段ボールに荷物を入れ、準備をする正一と体育座りでそれを見る三咲。
勝手にいじると正ちゃんが分からなくなるから手伝いはせずに見てるだけ。
留学を私に話してから正ちゃんは私に優しい。いつもは冷たくあしらうくせに小さい子の世話をしてるみたいに頭を撫でたり、微笑んだり。物心ついたときから正ちゃんがいて、今までずっと一緒だった。離れるのは寂しい。でも、それは正ちゃんだって同じはずだ。

「嫌になったら帰ってきていいからね」
「帰らないよ」
「……」
「嫌になっても負けないで頑張るつもりだからね」
「負けず嫌いだもんね、正ちゃん」
「誰かさんと一緒でね」

にっこり笑う正ちゃんに口を尖らせ拗ねる。負けたらしばらく落ち込むけどその分燃えるタイプだから結局正ちゃんは帰って来ない。まあ、結果を出さないで帰って来たら追い返すけど。

「あ、そういえば三咲は荷造りいいの?綱吉くんと暮らすんだろ?」
「…誰があんなやつと暮らすっつった」
「はあ、また喧嘩?」
「私はここで一人暮らしするー!」
「明日には謝りなよ」
「ちょっと正ちゃん話聞いてる?」
「はいはい」
「聞いてない!?」

私から段ボールへ視線が移り作業に戻る正ちゃん。背中を叩いてもガン無視。酷い。

「ほら、喉乾いた。紅茶淹れてよ」
「話逸らした」
「みんなコーヒーを飲むみたいだけど僕は三咲の紅茶が一番好きだよ」
「…知ってる」

正ちゃんがケーキを作るから私が紅茶を淹れ始めたんだ。これも終わりになるんだなあ…
カップを出しながらぼんやり思う。頭では分かってるんだけど実感湧かない。

「こうなったら正ちゃんに着いて行こうかな…」
「やめて。綱吉くん怖いからやめて」

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